日本ペイントホールディングス傘下で自動車用塗料を手掛ける日本ペイント・オートモーティブコーティングス(NPAC)は,トヨタと共同で,太陽電池の表面にデザイン性と,カラーリングを実現させる「太陽電池向け加飾フィルム」を開発した(ニュースリリース)。
太陽電池の設置場所は建物の屋根上から壁面,モビリティなどへと広がりつつあり,周囲の景観に合った高意匠の太陽電池のニーズが高まっている。
通常,太陽電池をフィルムで覆うと太陽光が透過せず発電しなくなるが,今回開発した加飾フィルムに含まれる顔料は特定の波長の太陽光を反射することで人に「色」を認識させつつ,残りの太陽光は透過することで,太陽電池の発電を確保しつつ,太陽電池の加飾に成功した。
加飾フィルムに使用している顔料は,特定の波長を反射して発色する半透明の自動車塗装向けのものを使用。この顔料は鱗(うろこ)のような形状のため,色ムラなく均一な発色を実現するには,顔料が同一方向を向くよう配列させ,塗膜の厚みを高精度に均一(数マイクロメートル)にコントロールする必要がある。
そこで,自動車外装を加飾ラッピングする樹脂フィルムの製造技術を応用し,明樹脂の中に顔料を浮遊させ,顔料が同一方向に配列されるよう透明樹脂をシャープな刃で一方向に伸ばすことで,色ムラなく均一に発色する加飾フィルムを実現した。
加飾フィルムの色は,使用する顔料の選定によって幅広く変化させることが可能であるとともに,印刷技術と融合することで木目やレンガ調,迷彩柄など意匠を表現できるという。今回,太陽電池の性能を維持しつつも光によって表情を変える,ピンク,ブルー,グリーンなど様々なデザインの実現に成功した。
一方,発色のため加飾フィルムの表面で光が反射し,太陽電池に用いると約10%の発電量低下が発生する。発電量の低下率は発色の濃さや色相によって異なるが,例えば,加飾フィルムを装着した太陽電池は,加飾フィルム無しの場合と比べて,木目調では約90%,緑色では92%の発電量を確認した。
加飾フィルムは,幅広い色のバリエーションを持つため,周辺環境と調和した色や意匠性を再現できる。例えば,軽量な太陽電池に加飾フィルムを装着すれば,店舗や家屋壁面やモビリティの外板などへの搭載が期待される。またシート状の太陽電池に装着すれば,いままで太陽電池を設置できなかった衣類や鞄,アウトドアグッズなどへの活用が期待されるとしている。
なお,両社は,F-WAVEと共同で,2021年3月12日より加飾フィルムをF-WAVE量産「軽量フレキシブル太陽電池」に実装し,加飾フィルムの各種耐久性,発電特性,および,意匠性の評価を目的に,F-WAVE熊本工場敷地内での実証実験を開始しており,NPACが製品化を目指す。