東大ら,超親水性の「ナノすりガラス」を開発

東京大学,産業技術総合研究所,物質・材料研究機構は,ナノメートルスケールの凹凸を施した「ナノすりガラス」を開発した(ニュースリリース)。

有機半導体のインクを印刷して良質な単結晶薄膜を得る際には,半導体インクを均質に基板に塗り広げるために親水性表面を持つ基板が必要となる。一般的に,親水性表面は,親水性コーティング,UV光照射,プラズマ処理などで得られるが,汚損による親水性の低下が見られ,継続的に親水性を維持することは難しかった。

研究グループは,物質の表面のわずかな凹凸と表面の濡れ性が関係していることに着目。一般的なガラスの表面を弱酸である炭酸水素ナトリウム水溶液を80°Cで処理することで,ナノメートルスケールのわずかな凹凸(1nm程度)を形成した。機械的な研磨などにより表面にマイクロメートルスケールの凹凸加工を施した「すりガラス」に対し,この研究で開発したものを「ナノすりガラス」と命名した。

ナノすりガラスの表面では水がよく濡れ広がり,超親水性の指標である水の接触角は3°以下となることが分かった。さらに,一般的な親水性コーティング剤や表面化学種の修飾効果は,熱などで表面化学種が劣化し親水性の維持が困難であるのに対し,ナノすりガラスの超親水性状態は,150°Cの高温でも1日程度維持されることが明らかとなった。

今回,高温での印刷が必要な有機半導体のモデルケースとして,ナノすりガラス表面に高品質な単結晶薄膜の大面積製造を検証した。その結果,150°Cでインクから印刷したn型有機半導体薄膜を1cm角以上の大面積(従来法の50倍程度)で製造することに成功した。

超親水性基板上の半導体膜は,近年研究グループが開発した半導体単結晶膜の転写法によりさまざまな表面に貼り付けて使用することができる。これを利用してデバイスを作製し,半導体膜の電気的特性を評価したところ,得られた薄膜が優れた電子輸送性能を示すことが明らかとなったという。

超親水性ナノすりガラスは,低環境負荷なプロセスで製造することが可能であり,表面平滑性に優れ,十分な透明性を有している。研究グループは今回,有機半導体薄膜を印刷する際のテンプレート基板としてその有用性を提案したが,親水性表面は濡れ性の改善に加え,高い防汚性を有するため水アカの防止など,さまざまな分野で利用できることが期待されるとしている。

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