岐阜薬科大学は,ハロゲン結合を利用した光反応で触媒的にATRA反応(原子移動ラジカル付加反応)を促進することを初めて明らかにした(ニュースリリース)。
医薬品合成では,炭素-炭素結合の形成する化学変換が必須となる。また,持続可能な開発を実現するためには,廃棄物を出さない医薬品合成のための分子変換反応の開発も求められている。
従来このような要件を満たすためには,多段階の化学変換を施した高価な金属触媒が利用されていた。また,金属触媒を調整するための費用,手間を考えると工業的な利用が制限されていた。
今回の研究では,市販で入手可能な4-フェニルピリジンを触媒として用いることで有機ハロゲン化物とハロゲン結合という非結合性の相互作用を形成すること,その相互作用を利用することで可視光に応答し有機ハロゲン化物の炭素-ハロゲン結合が均等開裂し,高い反応性を示す炭素ラジカル種を生成することを見出した。
この相互作用を鍵とした光反応による炭素ラジカル種生成法を利用し,高効率分子変換反応を開発した。すなわち,この手法を利用することで不飽和炭化水素存在化有機ハロゲン化物が原子効率100%で付加することを明らかにした。
この方法は,従来必要とされていた遷移金属触媒を用いることなく,太陽光の主成分である可視光を反応進行の原動力として進行する環境負荷の少ないクリーンな反応。研究グループは,この手法を鍵とした,クリーンな医薬品合成への応用が期待されるとしている。