富士経済は,新型コロナウイルス感染症の感染拡大により,急速に普及しているサーマルカメラを利用した検温/体温測定装置の国内市場を調査し,その結果を「COVID-19 の流行により激変する検温/体温測定向けサーマルカメラ関連市場の現状と将来予測」にまとめた(ニュースリリース)。
それによると,新型コロナウイルス感染症の流行により,ハンディ型やタブレット端末型を中心に市場が本格的に立ち上がり,2020年には275億円が見込まれるという。2021年は,新型コロナウイルス感染症の流行の長期化も想定され,3月頃まで継続する補助金制度も多いことから,底堅い需要が続くものの,市場はわずかながら縮小が予想されるとした。
2022年以降は新型コロナウイルス感染症の流行が収束することで市場は縮小していくとみるが,装置がニューノーマルに対応した製品として認知されることで,今後も一定の市場を維持すると予想する。また,監視カメラなどのセキュリティシステムや受付端末,入退室管理システム,顔認証などで,検温/体温測定が新たな付加価値になると期待され,2023年においても市場は200億円を超えると予測する。
個別に見ると,サーマルカメラは2020年2月~3月頃から市場が本格的に立ち上がり,当初は工業用途の製品が検温/体温測定に用いられることもあったという。その後,測定温度を体温に近い範囲に限定し,大幅にコストを抑えた検温/体温測定専用のサーマルカメラが4月頃から投入され,ハンディ型を中心に導入が進んでいるという。
2021年は新型コロナウイルス感染症の流行が長期化していることから,大手企業に加え,中小企業においても検温/体温測定に対する取り組みが進むとみている。
非接触検温/体温検知装置は,端末の上部にサーマルカメラユニットを搭載したタブレット端末型が主流であり,2020年の市場は110億円を見込む。2020年3月から5月にかけて先行メーカーが製品を投入し,9月頃まで新規参入が相次ぎ,市場は活況を呈しているという。サーマルカメラを利用した検温/体温測定装置の中で,最も普及が進んでいるとし,2021年も引き続き拡大を予想する。
今後は,顔認証と検温/体温測定の組合せが定着し,入退室管理や勤怠管理システムなどとの連携ニーズが高まっていくとする。また,デジタルサイネージを展開する企業では,新型コロナウイルス感染症の収束後を見据え,導入したタブレット端末を別の用途でも活用できる新たなアプリの提供などが進むとみている。
ハンディ型やタブレット端末型は測定の際に1人ずつ立ち止まる必要があり,複数人が同時に通り抜けるようなシーンには不向きであったが,10人以上同時に検温/体温測定が可能なウォークスルー型は,2020年5月頃から市場が本格的に立ち上がっており,検温/体温測定待ちによる密集・密接を回避できることから,需要が増加しているという。
顔認証技術を活用したディスプレー搭載製品が主流であり,補助金制度も需要増加を後押ししている。屋外での利用や,熱中症対策にも利用可能な製品が開発されれば,用途が広がり新たな需要が生まれるとしている。