富士経済は,新型コロナウイルス感染症の流行により世界的に景気動向が不安視される中,堅調に推移しているという画像処理システムの世界市場を調査し,その結果を「2020 画像処理システム市場の現状と将来展望」にまとめた(ニュースリリース)。
それによると,2019年の市場は米中貿易摩擦の影響が懸念されたが,中国において半導体,スマートフォン,デジタル機器関連の設備投資が回復したことやAI・ディープラーニング応用製品の採用拡大により,横ばいとなった。
2020年の市場は新型コロナウイルス感染症の流行により大幅な縮小が予想されたが,中国において春先から急速に半導体やスマートフォン,デジタル機器関連の需要が回復に向かっていることや,このパンデミックの影響から物流システムの自動化投資が急増していることから拡大するとみる。また,感染症対策として注目度が高まっている赤外線カメラの特需も市場拡大に寄与するとみている。
今後は,新型コロナウイルス感染症の収束に伴う設備投資の回復と,アジアを中心とした5G通信関連,米州をはじめグローバルで設備投資が旺盛な物流関連などを軸に市場拡大が期待されるという。
検査アプリケーションの2020年の市場は,6,251億円(前年比1.6%増)を見込む。新型コロナウイルス感染症の流行の影響による設備投資の抑制がみられるものの,堅調なスマートフォン関連需要や5G通信関連需要を獲得している。
単体機器の2020年の市場は,6,089億円(前年比7.7%増)を見込む。中でも,画像処理装置(筐体型)が中国をはじめとしたアジアにおけるデジタル機器関連や,米州における物流関連での需要の増加に伴い伸びるとみている。また,2020年は赤外線カメラの需要が新型コロナウイルス感染症対策のスクリーニング用途で大幅に増加し,市場拡大をけん引するとみる。
観察・測定関連機器の2020年の市場は,1,677億円(前年比11.0%減)を見込む。米中貿易摩擦の影響を受けた2019年に引き続き,2020年も縮小するとみる。2021年以降は,中国をはじめとしたアジアで電子部品関連での需要増加が期待され,再び拡大に転じると予想する。
AI・ディープラーニング応用製品の2020年の市場は,164億円(前年比2.3倍)と見込む。市場は立ち上がったばかりではあるが,画像処理のトレンドとなっており,新型コロナウイルス感染症の流行下においても,各品目が高い伸びを示すとしている。
注目市場は以下の通り。
●ディープラーニング活用型画像処理ソフトウェア
画像処理に特化したディープラーニングソフトウェアを対象とした。新型コロナウイルス感染症が世界中で流行拡大する中,市場は好調に拡大しているという。2020年は,PoC(Proofof Concept:概念実証)が盛んに行なわれていることから大幅に市場は拡大するとみる。
ユーザーの画像処理に関する理解度や関心は年々高まっており,今後は幅広い業種で採用が広がっていくと期待する。また,AI研究者が多く,スタートアップ企業も多い中国やその他アジアの地域ではさらなる市場の活性化につながる新製品の登場が期待されるとしている。
●ウエハー外観検査装置
ウエハー上の回路パターンとの画像比較ができるパターン付きウエハー検査と,回転するウエハーにレーザーを照射し,散乱光から欠陥を検出するパターン無しウエハー検査があり,これらに対応できる外観検査装置を対象とした。
2019年は,5G通信関連や半導体メモリでの需要が回復し,アジアを中心に市場は拡大した。2020年は,設備投資が進んでいることから市場は拡大するとみる。今後は,5G通信関連の機器で需要の増加が期待されるという。
●産業用ToFカメラ
光の飛行時間を利用して、対象物との距離を測定するToF(Time of Flight)技術を活用した産業用カメラを対象とした。市場は2017年ごろに立ち上がり,欧州や米州を中心に市場が形成されている。米中貿易摩擦や新型コロナウイルス感染症の流行下においても好調だという。今後は,中国や東南アジアなどでも物流関連,各種製造業におけるピッキング,AGV(無人搬送車)向けが増加し,市場は拡大するとみる。
●Embedded Visionシステム
エンベデッドシステムにプラグアンドプレイで取り付け可能なカメラ(カメラモジュール)を対象とした。市場は,欧州を中心に形成されている。日本でも外資系メーカーが製品展開をしており,これまで市場は拡大してきたという。
2020年は,新型コロナウイルス感染症流行の影響で縮小するとみるが,機器・装置に組み込み可能な小型で低コストのカメラの需要が高まっており,2021年以降市場は拡大していくとみている。