東京大学の参加する国際研究グループは,太陽系から約26光年の距離にある赤色矮星Gliese486を公転する惑星Gliese 486 bを発見した(ニュースリリース)。
現在,惑星が主星の手前を通過する「トランジット」という現象を使い,ほぼ全天で系外惑星を探すNASAのトランジット惑星探索衛星TESSによる系外惑星探査が行なわれている。
TESSの主要な目的は,惑星の質量・半径や大気などの性質を詳しく調べることができる,太陽系の近傍の恒星を公転する惑星の発見。2018年7月から,4台の超広視野カメラで24度×96度の領域を27.4日ずつ観測し,惑星が主星の前を通過する際に起きる主星の周期的な減光を探している。
今回惑星が発見されたGliese 486は,トランジット惑星候補TOI1827.01として発表された。周期的な減光が,恒星同士が食を起こす食連星によって生じる見間違いの可能性があるため,減光しているのが本当にその恒星なのか,そして減光を引き起こしているのが惑星かを確認する追加の地上観測が不可欠となる。
発見確認観測の有力な方法の一つに,トランジットを複数の光の波長帯で観測する多色トランジット観測がある。日本のグループは,開発した多色同時撮像カメラMuSCAT2を用いて多色トランジット観測を行なった。これにより,実際に減光を起こしているのがGliese 486であること,そして減光の割合が可視光から赤外線の全ての波長で同じであり,惑星によって減光が引き起こされていることが確認された。
また,スペインのカラーアルト天文台の3.5m 望遠鏡に設置された視線速度測定装置CARMENESや,ハワイ島のマウナケア山頂に設置された口径8.1mのジェミニ北望遠鏡の視線速度測定装置MAROON-Xでも追加の視線速度のデータが取得された。
以上のTESSと地上望遠鏡の連携した観測の結果,Gliese 486 bは質量が地球の約2.8倍,半径が地球の約1.3倍で,岩石を主体とした地球型惑星であるとわかったという。この惑星は公転周期が1.467日しかなく,表面温度は摂氏400度を超えると推定されるため,生命が存在できるような環境ではないと考えられる。
しかし,公転周期が短いことや温度が高いことは,トランジット惑星に対して可能となる「トランジット分光」や「二次食分光」による大気の組成や温度分布を調べる上では有利となる。さらに,Gliese 486 bは太陽系から約26光年と近いことから,今後惑星の大気について詳しく調べることができる地球型の系外惑星になるとしている。