豊技大ら,透明感が立体形状知覚を弱めると発見

豊橋技術科学大学と豪University of New South Walesは,物体の厚さを目で見て推定する際に,ガラスのような透明な光学特性をもつ物体は厚みが薄く知覚されることを発見した(ニュースリリース)。

光沢は物体表面の反射に関わる光学現象である一方,物体表面の光学現象には,透過屈折の特性もある。透明性は基本的な特性の一つであるにもかかわらず,これまで透明特性とモノの立体形状知覚に関する調査は行なわれてこなかった。そこで,研究グループは従来の拡散反射や光沢と比較して透明特性は立体形状知覚にどのように影響を与えるか調査した。

実験参加者は,ディスプレーに表示されたコンピュータ・グラフィック(CG)により生成された球体物体を観察し,その奥行き方向の厚みを推定した。物体には厚みや表面材質が異なるものを多数用意して比較した結果,表面材質に透明特性のみを持たせた物体は,他の表面材質を持つ同じ形状の物体よりも潰れて見えていたことが明らかになった。

この効果は,物条件を変えても一貫して生じていた。これらの結果は,透明特性も拡散反射や光沢反射と同様に人間の立体形状知覚に影響を与えていることを示唆するものだという。

次に,物体画像に含まれるどのような手掛かりが厚み知覚に寄与していたのかを画像分析を行なったところ,厚み知覚を最も正しく推定したのは,画像の局所コントラストの広域分散という特徴量だった。

局所コントラストとは,画像のごく一部領域を切り抜き,その範囲内に含まれるピクセルの二乗平均平方根(RMS)コントラストのことで,網膜や脳の初期視覚領域でのニューロン活動に相当する。広域分散とは,上記のRMSコントラストを視野の広い範囲内で集計し,分散を計算したもの。

以上の結果で得られる数値は,画像でいうところ,光沢物体の縁付近で細かなコントラストが急激に変化する場所が存在することや,拡散反射や透明特性では細かなコントラスト変化の代わりに,大域の輝度変調があることに対応し,厚み形状推定として妥当なものだという。

研究グループは,計算モデルによって光沢や透明感,立体の凹凸を見誤りやすい状況が生じたときに,歩行アシスト装置やスマートグラス,半自動運転装置などがあらかじめ注意を促すなどの応用ができれば,事故を未然に防ぐことが期待できるとしている。

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