情報通信研究機構(NICT),東北大学,桐蔭横浜大学は,サブミクロンの分解能を持つ高速ホログラフィック蛍光顕微鏡システムの開発に成功した(ニュースリリース)。
デジタルホログラフィは3次元画像情報をホログラムとしてセンシングできる技術であり,世界的な研究・開発によってレーザー光だけでなく自然な光もホログラムとして記録できるようになった。あらゆる光学顕微鏡にホログラムセンシングの機能を与えられるため,3次元蛍光顕微鏡,他の光学顕微鏡への応用が期待されている。
研究グループでは,自然な光のカラーホログラムを高速に記録する3次元顕微鏡を開発し,これまでに,数10μmの多数の蛍光体を1回の露光でカラーホログラムセンシングしてきた。一方で,深さ方向の分解能が低かったため,1μm以下の大きさの物体を3次元的にセンシングできなかった。
今回研究グループは,デジタルホログラフィに基づき,スキャンが不要で,高倍率,高分解能な,高速ホログラフィック蛍光顕微鏡システムを開発した。直径0.2μmの蛍光体を試料として,深さ方向にも定量的にサブミクロンの分解能を持つことを実証した。
蛍光をホログラムとしてセンシングすることにより,多数の蛍光体を同時に3次元センシングすることに成功した。さらに,測定を高速化する信号処理アルゴリズムを同時開発したことにより,位相変調素子の1回の変調で3次元センシングできるようになった。この結果から,高速な位相変調素子を適用できるようになり,1,000分の1秒以下での測定が期待できるという。
このシステムを計算コヒーレント多重方式と融合させることで,カラー化の実証にも成功した。開発したアルゴリズムを計算コヒーレント多重方式に適用することで,少ないホログラムの枚数でカラー3次元センシングできるため,ホログラム1枚当たりの光量を多く取れるようになった。
研究グループは,細胞内の物質など動きのある物体を観察するために,サブミクロンの物体をホログラムの動画としてセンシングできる,3次元動画顕微鏡へ展開する。また,定量的な位相情報を得ることで,深さ方向の分解能を更に高めるとしいてる。そして,非常に小さな物体から来る蛍光は,量子光学レベルで弱い光とされており,その様な光でも鮮明なカラーホログラムとしてセンシングするための方法を開発する。
さらに,開発したシステムはホログラフィシステムでありながら振動に強いため,コンパクト化し,持ち運び可能な3次元顕微鏡装置とすることを将来の目標に掲げている。