電通大ら,虹色発光標識のポートフォリオを開発

著者: sugi

電気通信大学と産業技術総合研究所は,医療・環境診断や生体イメージング(可視化)に適用するため,全可視光領域で発光する「虹色発光標識のポートフォリオ」(ポートフォーリオ=標識群)を開発した(ニュースリリース)。

生物発光を用いたバイオアッセイや癌のイメージングなどが注目を集めている。しかし,特に海洋生物由来の生物発光は「青色~緑色」に偏っているため,多色化(マルチカラー)イメージングができないなどの問題があった。

今回,海洋生物由来の発光酵素に共通するセレンテラジン(CTZ)骨格の炭素の6番位置に2重結合を増やし,その末端に官能基として2級アミンを導入し,炭素の8番位置の置換基を炭素1個を介したフェニル基とすることで,これまでなかった多色性を示す発光基質(1 タイプ)を開発した。

また,炭素の2番位置の置換基に水酸基(OH)がなく,炭素の8番位置にフェニル基が直接結合している発光基質(2タイプ),発光エビ由来の発光酵素(NanoLuc)と反応して高輝度で発光するフリマジンを参考に開発した基質群(3タイプ)を開発した。

開発した虹色発光基質群を調べたところ,発光酵素と反応して可視光領域の青色から赤色,さらには近赤外線に至るまでのさまざまな発光色を生み出せることがわかった。また,一部の組み合わせは,非常に高い相互選択性を持っていたという。

今回の技術の多色性と選択性を用いれば,発光信号間の干渉の心配のないバイオアッセイが開発できるなど,これまで不可能だった技術が実現できる可能性がある。

例えば,患者の体液に存在する7つのバイオマーカーを同時計測できる可能性があり,この技術の応用により各種健康診断を迅速かつ簡便にできると考えられるという。

また,今回開発した技術により,これまで検出が困難だと思われていた小さいウイルスでも高感度で検出できるバイオアッセイを開発できる可能性も考えられる。さらに,生体組織透過性の高い赤色発光により,動物個体内での癌の転移などを簡便に可視化できる可能性もあるとする。

研究グループは,今後,今回開発した虹色発光標識のポートフォリオを用いた医療・環境診断研究を続けるとともに,例えば,長波長領域でより輝度が高く,化学的な安定性に優れた虹色発光標識のポートフォリオに改良するなど性能向上にも注力する。また,さまざまな動物個体内での生体イメージングも目指すとしている。

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