古河電気工業とNITTOKUは,電動車(xEV)向けモーター用レーザー溶接機を製品化した(ニュースリリース)。
自動車市場に占めるxEVの比率は今後急速に高まることが予想されており,主動力となるモーターにおいては小型化・軽量化・高効率化が求められている。
また,今後の小型・高出力モーターでは平角線を用いたモーターが主流になりつつある。この平角線の継線工法においては主にTIG溶接(電気を用いたアーク溶接方法の一種)が用いられているが,任意箇所を狙って溶融することができず,平角線の配置に高い精度が求められる。
一方で,レーザー溶接は非接触であるため画像処理技術との相性も良く,任意の箇所を狙って選択的に溶融することができ,少ない入熱で効率よく溶接することができる。しかし,平角線の材料である純銅は熱伝導率が高く,ファイバレーザーの波長に対する光吸収率が低いため,入熱制御が難しく加工時に溶融池やキーホールの形成が安定せず,加工欠陥(スパッタ・ブローホール)が発生するといった課題があった。
そこでこの製品は,レーザーに古河電気工業が11月16日に発表した,青色DDLと近赤外(IR)ファイバレーザーを組み合わせたBlue-IRハイブリッドレーザー「BRACE」(ブレイス)を採用している。青色レーザー銅を溶かし,IRレーザーで深く加工することで,従来のファイバーレーザーでは難しかった銅加工の高効率化と高品質化を実現している。
この装置は垂直に立てた2本の平角線の先端部分同志をリモート溶接する。このとき,それぞれ微妙に異なる平角線の位置や間隔をNITTOKUの培った画像認識技術により精密に解析し,適切な角度と出力でレーザーを照射する。これにより,溶接工程での品質と生産性向上の両立が可能となったという。
この装置により,平角線間の高さ・隙間ギャップなどにも対応したモータの継線が可能となり,これまで平角線同志を密着させて通電する必要があったTIG溶接と比べて10倍,他のレーザー加工装置と比較しても2倍の加工スピードと工程の簡素化を実現した。
この製品は2020年12月より,NITTOKUが受注を開始する。顧客のモーター形状,サイズ,加工工程に応じた設備仕様を提案するとしている。