産総研ら,最高レベルの低反射・防曇性構造体開発

産業技術総合研究所と東亜電気工業は,広い波長帯域で広い入射角範囲の低反射率が実現できるモスアイ構造体をさらに越える,世界最高レベルの低反射特性と防曇効果を併せ持つナノ構造体を開発した(ニュースリリース)。

今回開発した自己形成柱状成膜技術は,真空蒸着による成膜時の無機材料の粒子の平均自由行程を従来の1/10以下に制御し,無機粒子同士の衝突頻度を高めて,ナノ構造体内部に無機材料の柱状構造を自己形成させる技術。

一般的な成膜では,ナノ構造体の表面に無機材料の平坦な薄膜が成膜されるのに対して,自己形成柱状成膜では,ナノ構造体内部に無機材料の柱状構造が自己形成される。

今回射出成形した反射防止ナノ構造体は,市販のモスアイフィルムの構造と異なり,ランダム周期の凹構造となり,構造の違いがあるものの,市販のモスアイフィルムと同等の低反射特性を有していることがわかった。また,視感反射率が1%以下となる入射角(写りこみが少ない良好な反射特性を示す角度)の範囲は入射角で約40度まであった。

一方,自己形成柱状成膜した反射防止ナノ構造体の場合は,ナノ構造体の内部に柱状構造が自己形成された効果により,入射角60度まで優れた低反射特性を示した。このとき,従来のモスアイ構造体に比べ,1/7の反射低減効果があり,飛躍的な光学特性向上が見込めることが分かったという。

また,今回開発した反射防止ナノ構造体は、ナノ構造体内部に親水性無機材料の柱状構造が形成されるため,超親水状態(水接触角:10度以下)が長期間に渡って維持でき,防曇機能も持つことが分かった。無機材料で構成された防曇構造は耐久性が高く,また,従来防曇性を付与するために用いられてきた塗工法に比べて歩留まり高く製造することが可能だという。

このように今回開発した技術は,広い入射角での低反射性に加えて長期の防曇性も付与でき,さまざまな光学部材に展開できる技術であり,レンズや液晶パネル,自動車のメーターパネルなどの高機能化に貢献でき,自動車産業向けの高機能化部材や,さらなる安全安心が求められるIoTセンサーなど国際的な競争が激しい製品開発分野に貢献できるとする。

なお,今回,産総研を仲立ちとして東亜電気工業と伊藤光学工業が事業の協力関係を構築し,それぞれが今まで培ってきた技術開発を融合させることにより,今回の技術に係る新たな事業展開を始めることとなったという。なお,営業窓口業務は東亜電気工業が担当するとしている。

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