早大ら,CNTフォレストの長尺化に成功

早稲田大学と静岡大学は,カーボンナノチューブ(CNT)の新たな成長方法を開発し,従来最長の2cmを7倍長くした14cmのCNTフォレストの成長に成功した(ニュースリリース)。

CNTは炭素のみで構成され,軽量・強靭であり高い電気・熱伝導性をもつことから,様々な産業・医療分野での応用が期待されている。現在CNTを成長させるには化学気相成長(CVD)法が主に用いられており,その際にナノ粒子触媒が必要。

基板上に触媒を担持し,高密度なCNT(CNTフォレスト)を成長させる手法は,長尺なCNTを高効率で得ることが可能な手法として有力だという。集合体ではない一本のCNTを50cm程度に成長させる手法は報告されていたが,CNTの数密度が10万倍以上であるCNTフォレストの成長においては最長で2cm程度であり,成長の停止が課題だった。そして成長の停止には,高密度に存在することに由来する触媒の構造変化が大きく関わっていることが分かっていた。

今回,CNTフォレストの成長中に起こる触媒の構造変化を止めることで,長尺なCNTを成長させることを目指した。その結果,ガス中に鉄(Fe)とアルミニウム(Al)の原料を微量に添加することで,触媒の構造変化が遅くなり26時間で14cmのCNTフォレストの成長に成功した。

この手法を近年開発されたガドリニウム(Gd)添加触媒(Fe/Gd/Al2Ox)と組み合わせることで,CNTフォレストの速い成長速度と長い成長寿命を両立させた。また従来多く用いられているホットウォール型の装置ではなく,開発したオリジナルのコールドガス化学気相成長(CVD)法を用いることで,CNT上に堆積する不純物を最小限にし,純度の高いCNTの成長を可能にした。

成長条件の詳細な検討から,Fe原料はFe触媒が下地に拡散し無くなる現象を防ぎ,またAl原料は触媒の横方向の構造変化を防いでいることが示唆され,これらの原料を供給しなかった場合は成長が1時間程度で止まってしまうのに対し,供給した場合は成長が26時間程度持続したという。

今回の結果によって,触媒構造の変化を抑制することができたが,そのメカニズムはまだはっきりと分かっていないという。メカニズムの解明による手法の改良,また更なる長尺成長へ向けて実験条件の探索と最適化の余地が残っており,今後更なる触媒や成長手法を開発することで,より実用的な成長手法を開発していくとしている。

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