九州大学は,光を目に入射したときに現われる第4プルキンエ像(水晶体の後面からの反射像)を利用して,安全に簡便かつ短時間(現状約4秒)で水晶体の混濁度や分光透過率を測定可能なシステムを,Singapore Eye Research Instituteと開発した(ニュースリリース)。
目の中にある水晶体は加齢に伴い混濁(光学濃度が上昇)していき,光の透過率が低下する。水晶体がどのくらい混濁しているのか,どの波長の光をどのくらい通すのか(分光透過率)といった情報は,例えば白内障の診断や視覚・色覚研究、体内時計の光同調作用を代表する非視覚研究などに役立つという。しかしながら,生体における水晶体の混濁度や分光透過率などを簡便かつ同時に測定できる方法はこれまで確立されていなかった。
開発したシステムは,光を照射する光源装置と,プルキンエ像を取得するための撮像素子,解析用PCのみで構成されたシンプルなもの。複数波長(色)の光を入射したときの第4プルキンエ像を撮像し,波長別の光学濃度(分光光学濃度)を測定する。分光光学濃度の曲線下面積(AUC)が混濁度の指標となり,モデル式によって分光透過率を推定する。
研究グループは,このシステムは将来的には持ち運び可能な小型デバイスの開発にもつながるものだという。水晶体の混濁度だけでなく分光特性を評価することができるので,白内障の診断はもちろん,水晶体が関わる研究分野において新たな発見に貢献できる可能性が考えられるとしている。