浜松ホトニクスは,計測感度を従来製品の10倍以上に高めた,イムノクロマト試薬の蛍光を読み取る装置「イムノクロマトリーダ C10066-60」を開発した(ニュースリリース)。
イムノクロマト法とは,血液や鼻腔拭い液などの検体に含まれる抗原や抗体の有無を判定する検査手法。検体をイムノクロマト試薬に滴下し,判定ラインの発色を確認することで抗原や抗体の有無を判定する。このとき,検体に含まれる抗原や抗体の量が多いほど色が濃くなる。
一般的に,イムノクロマト法では目視で発色を確認するが,イムノクロマトリーダを用いることで,目視では識別しにくい微量な抗原や抗体の有無も判定できる。また,測定結果を数値化できるためより正確な判定ができる。
新製品は,イムノクロマト試薬に紫外光を照射し,抗原や抗体と結合した蛍光物質からの光を検出する(蛍光法),高感度で再現性の高いイムノクロマトリーダ。同社はこれまで,試薬メーカーの研究開発や品質管理用途に向け,試薬に可視光を照射し発色を確認する吸光法タイプと,計測感度の高い蛍光法タイプのイムノクロマトリーダを開発,製造,販売してきた。
現在,イムノクロマト法による新型コロナウイルスのスクリーニング検査の重要性が高まっており,さらに感度の高い蛍光イムノクロマトリーダへの要求が高まっているという。
イムノクロマトリーダにおいては,試薬に照射する光を強めることで信号量を増やすことができるが,ノイズも増幅されるという課題があった。今回,独自開発した信号処理技術により,照射光を強めるとともに増幅回路を用いて信号量を増やしながらもノイズを低減させることに成功した。また,部材を見直し光学設計を最適化することで,計測感度を従来製品の10倍以上に高めた。
さらに,データ解析技術により,測定結果のばらつきを表す変動係数(Coefficient of Variation;C.V.)が3%と,従来製品と同等となる業界最高水準の測定再現性を実現した。
この製品により,新型コロナウイルス向けをはじめとする試薬の研究開発の効率が向上すると期待できるとする。また,従来は検出が難しかった弱い発光を確認でき,品質を管理できる試薬の幅が広がると期待されるという。
さらには,試薬に合ったイムノクロマトリーダをOEM供給することで,感染症診断などの精度が高まると見込まれる。今後,さまざまな蛍光物質からの光を検出できる製品の開発を進め,製品のラインアップを拡充していくとしている。