京セラは,レーザードップラー方式を採用した小型の光学式流量計測用モジュールを開発し,10月よりサンプル出荷を開始すると発表した(ニュースリリース)。
現在,多くの製造現場などにおいて,品質管理や生産性を向上させるために,さまざまな方式の流量計が使われている。しかし,従来の液体に接触する流量計では,化学薬品や血液など,汚染が許されない現場での使用が困難という課題もあった。
開発したモジュールは,チューブを流れる液体にレーザーを照射し,光が液体内を移動する粒子に当たることで生じる反射波の周波数変化(ドップラー効果)から,液体の流量を計測する方式。反射光の周波数が移動する粒子の速度に応じて変化するので,反射光を受光素子で電気信号へ変換し,演算処理することで流量を計測する。
センサデバイスのサイズは,業界最小(3.2×1.6×0.9mm,重さ約0.02g)。このセンサデバイスを同社のセラミックパッケージの加工技術と光学シミュレーションによる設計最適化により,小型モジュール化を実現した。
レーザードップラー方式の採用で,チューブに触れない「非接触」計測や,センサーをじかに液体に触れさせない「非接液」計測が可能。そのため,汚染リスクが少なく,衛生面に優れているので,非接触測定が求められるような医療機器での流量管理が可能となる。計測はレーザーを当てるだけのため,細いチューブやマイクロTASなど,従来非接触測定が難しかった微細流路における流量測定への応用が期待される。
独自のアルゴリズムにより,1mL/min以下の微少流量から1L/min程度の大流量まで,幅広い流量域での測定を実現。光学式のため,従来では測定が難しかった高粘度の流体や,これまで困難とされていた液体についても測定を可能とする。
レンズなどの光学部品を削減し,シンプルな構造を採用したことで,高度な光学設計のノウハウを必要とせず,比較的簡単に装置へ組み込むことができる。さらに,モジュールを小型化したことで,これまで大型流量計では設置が困難であったさまざまな機器や,チューブ配管が密集した場所での設置を可能とした。
同社によると,流量計測向けにモジュール化した製品を販売するのは,この製品が世界で初めて。同社は今後,原料製造,医薬品製造,飲料製造,医療業界ほか,多くの製造現場などの幅広い分野で市場開拓を強化していくとしている。