理研,低電流でのスキルミオン制御に成功

理化学研究所(理研)の研究グループは,低電流密度のパルス電流によって,直径約1万分の1ミリサイズの磁気渦「スキルミオン」の生成・消滅・移動を制御することに成功した(ニュースリリース)。

固体中に存在する多数の電子スピンは,磁場などの外部刺激を加えると「渦」のように整列し,磁気渦構造を生成することがある。この「スキルミオン」と呼ばれる磁気渦は,トポロジカル数「-1」として特徴づけられ,一度生成されると安定した粒子として振る舞う。低電流密度で駆動できるなどの特性も発見されており,新しい磁気記憶媒体としての応用に適した特性を多く持っていることが分かっている。

スキルミオン格子構造の存在は,2009年にキラル結晶MnSi(Mn:マンガン,Si:シリコン)において初めて観察された。2010年には,MnSiと同じ結晶構造を持つFe0.5Co0.5Si(Fe:鉄,Co:コバルト)において,スキルミオン格子および単一スキルミオンの内部のスピン配列の可視化がローレンツ電子顕微鏡観察により実現した。

スキルミオンは微小電流で移動を制御できることが提唱されているが,単一スキルミオンの制御はまだ実証されていなかった。

また,キラル結晶におけるスキルミオンは,電流によって高速で動くうえ,スキルミオン自体の大きさも100nm以下と微小であることから,微小電流下のスキルミオンの動的観察には,究極の時間分解能と空間分解能を持つイメージング法の開発が求められている。

今回,研究グループは,小さな「切り欠き」をつけたらせん磁性体FeGe(Fe:鉄,Ge:ゲルマニウム)のマイクロデバイスを作製した。このデバイスに,レーストラック・メモリで使用される電流密度より3桁低い微小電流の超短パルスを流した結果,直径80nmの単一スキルミオンとスキルミオン格子が生成・消滅・移動することが分かった。さらに,スキルミオンクラスター(凝集体)の回転運動を初めて直接観察した。

つまり,磁壁を移動する電流の閾値(下限)より3桁小さい微小電流パルスで,スキルミオンの生成・消滅・移動,およびスキルミオンクラスターの回転運動を実証した。

この結果は,スキルミオンを用いた記憶・演算素子における情報担体,またはニューロモーフィックコンピューティングのシナプスとして,省エネルギー・高密度・超小型化の電子デバイスの創出につながるとしている。

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