阪大ら,アモルファス構造のエネルギーを予測

著者: 梅村 舞香

大阪大学,岡山大学,東京大学は,トポロジーの情報と機械学習を組み合わせることで複雑なアモルファス構造のエネルギーを予測する新規手法を開発した(ニュースリリース)。

アモルファスは太陽電池やコーティング材料など幅広く応用されている材料。その複雑な構造と物理的性質や機能の相関を解明するためには,新たなシミュレーション手法の開発が不可欠。

現在,最も有力な手法は,高精度な量子化学計算を再現する代用モデルを機械学習によって作成する機械学習ポテンシャルと呼ばれるもの。しかし,アモルファス構造の特徴をどのように機械学習モデルの入力データに反映するかという点が課題だった。

研究グループは,トポロジカルデータ解析手法の一つ,パーシステントホモロジーを応用することで,原子の繋がり方の情報を直接的に機械学習モデルのインプットとし,シンプルなモデルでアモルファスカーボンのエネルギーを予測できることを示した。

まず,密度汎関数理論を用いて,様々な密度での液体状態とアモルファス状態の炭素の構造とエネルギーの高精度なデータを作成した。そして,得られた構造の特徴を,パーシステントホモロジーを用いて解析した。

パーシステントホモロジーはパーシステント図と呼ばれる二次元平面上の点の分布として可視化される。この図を多数の小さな正方形に分割し,各領域あたりに点がいくつ存在するかというヒストグラムの形式に変換し,その情報とエネルギーの計算結果を学習データとして機械学習を実行した。

その結果,最もシンプルなモデルの一つ,リッジ回帰モデルでも,エネルギーの予測ができることが明らかになった。また,ヒストグラムを画像データのようにみなして,畳み込みニューラルネットワークを用いることで,予測性能が向上することも判明した。

なお従来の原子間距離や角度の分布に基づく記述方法であっても,グラフニューラルネットワークなどの高度なアーキテクチャを用いると原子の繋がり方の情報を抽出できることが知られている。

そこで,研究グループは,グラフニューラルネットワークを利用した場合とパーシステントホモロジーを用いた場合について,構造情報の捉えられ方を比較した。その結果,パーシステントホモロジーを用いると,シンプルなモデルであってもグラフニューラルネットワークの場合と同様の情報を抽出できていることもわかった。

研究グループはこの成果により,複雑な構造を持った物質に対する高効率なシミュレーション技術の発展が期待されるとしている。

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