スカパーJSATホールディングスの100%子会社であるスカパーJSAT,理化学研究所,宇宙航空研究開発機構(JAXA),名古屋大学,九州大学の研究グループは,世界初となる,レーザーを使う方式によりスペースデブリ(不用衛星等の宇宙ごみ)を除去する衛星の設計・開発に着手する(ニュースリリース)。
1957年のスプートニクの打ち上げ以来,使われなくなった人工衛星,故障した人工衛星,打ち上げに用いられたロケットの部品や衝突した様々な人工物の破片などが加速度的に増え続けている。
例えば,1mm以上のスペースデブリは1億個以上と推定され,さらに宇宙空間を秒速約7.5kmという超高速で飛び交っているため,それが人工衛星に衝突することで,衛星のミッション終了などのダメージを引き起こす可能性がある。このように,宇宙環境の悪化により,宇宙の持続的利用が不安視されている。
スカパーJSATは,1989年に日本の民間企業初の通信衛星JCSAT-1号を打ち上げて以来,宇宙利用企業の草分け的な存在として,30年以上にわたり衛星通信サービスの提供を国内外に行なってきた。
既存サービスに加え,2018年より開始した次世代ビジネスを検討する社内スタートアップ制度の下,持続可能な宇宙環境の維持を目指したプロジェクトを立ち上げ,産学連携で本事業の実現性の研究と検討を進めてきた。
各種のスペースデブリ除去手法があるなか,スカパーJSATは,「接触しないため安全性が高い」,「スペースデブリ自身が燃料となり,移動させる燃料が不要なため経済性が高い」という2点に際立った利点があるレーザー方式を採用することにし,レーザーの基礎開発に実績のある理化学研究所とレーザーアブレーションによる推力発生実験を行ない,技術の実現性を確認した。
そして,衛星の主要なミッション機器を開発するため,2020年4月に理化学研究所内に融合的連携研究制度チームとして,正式に「衛星姿勢軌道制御用レーザー開発研究チーム」を設け,名古屋大学及び九州大学と連携しレーザー搭載衛星の設計開発(検討を含む)を進める。なお,衛星と地上システムについては,JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)の枠組みを通じた検討を共同で実施する。
なお,この事業は2026年のサービス提供を目指すとしている。