京都⼤学の研究グループは,光合成により⽣じたデンプンの新たな機能を発⾒した(ニュースリリース)。
植物は太陽光のエネルギーを利⽤して⼆酸化炭素(CO2)を固定し,炭⽔化物(ショ糖やデンプン)を蓄積する。⽔中に⽣息する多くの藻類では,CO2の固定酵素がピレノイドと呼ばれる構造に集積し,光合成によって⽣じたデンプンがその周囲を取り囲む「デンプン鞘」と呼ばれる構造をとることが知られている。
ピレノイドは,約200年前に発⾒され,今ではCO2が⽋乏する環境で光合成を維持するために必要とされているが,貯蔵物質であるデンプンがピレノイドの周りに集まる意義については不明だった。
研究グループは,モデル⽣物の緑藻クラミドモナスから,ピレノイドの周囲にデンプン鞘を形成できない変異株を調べた。そして,デンプン鞘が,ピレノイドから拡散して漏れ出るCO2の物理的な障壁となるだけでなく,漏れ出たCO2をリサイクルするタンパク質をデンプン鞘の周りに正しく配置するのに必要であり,デンプン鞘⾃⾝の構造が光合成の効率低下を防ぐ機能を持つことを発⾒した。
この研究は,貯蔵物質として教科書に記載されてきたデンプンの新しい機能的側⾯を明らかにした成果であるとともに,藻類のピレノイドを陸上植物に導⼊し,作物の⽣産性向上につなげようとする応⽤研究の礎となることが期待されるとしている。