東レは,正面からの光はガラスのように透過し,斜めからの光は鏡のように反射する世界初の光学機能を備えたフィルム「PICASUS®VT」を開発した(ニュースリリース)。
一般的な光学材料として,透明ガラスや透明プラスチックのように正面~斜めいずれの方向から入射した光もほぼ透過する素材や,金属膜のように正面~斜めいずれの方向からも入射した光を反射する素材があるが,正面からの光は高い透過率で透過し,斜めからの光は高反射するといった光の指向性をコントロールできる光学素材はこれまで存在しなかった。
今回創出したフィルムは,同社独自のナノ積層技術を駆使するとともに,新規の光学設計に基づいた樹脂屈折率の高精度制御により,正面からの光を透過し,斜めからの光を反射するという全く新しい機能を発現させることに成功しているという。
このフィルムをAR(拡張現実)・MR(複合現実)用のHMD(ヘッドマウントディスプレー)やHUD(ヘッドアップディスプレー)に用いた場合,透明ガラスや透明プラスチックと同様に風景の視認性は維持しつつ,従来の透明ガラスやプラスチックに比べて,投影情報をはっきりと表示することができる。
また,PCやスマートフォン向けの覗き見防止フィルムや次世代ディスプレー用光学部材に用いた場合には,透過性の向上や,集光やのぞき見防止に対するマルチアングル性の発現など,ディスプレーの機能向上に貢献することができるという。同社は3年後の実用化を目指して,研究開発を進めていくとしている。