理科大,金属クラスターの立体構造を制御

東京理科大学の研究グループは,金-白金合金クラスターAu4Pt2において安定化保護剤として用いられるリガンド間の相互作用により,クラスターが多様な立体構造を取ることを明らかにした(ニュースリリース)。

金属クラスターを電子デバイスのナノ素材として用いる場合,クラスターをある程度の大きさにまで集積させる必要がある。しかし現状では,集積化に適した金属クラスターの構成単位の種類は極めて限られており,そのため,集積化に必要な要素や集積化によって得られる物性や機能などについてもほとんど情報がなかった。

研究グループでは,1D-CS構造を制御するためには,クラスター間のリガンドの相互作用を制御する必要がある,また,リガンド同士の相互作用は,個々のクラスター内のリガンドの分布に影響され得ると考え,「目的の構造を持つ1D-CSの創製には,クラスター内部のリガンドの相互作用を制御する必要がある」と仮定した。

この研究ではこの過程に基づいて,リガンドであるSRと,対応するクラスターの構造,金-白金合金クラスター[Au4Pt2(SR)8]0で形成された1D-CS構造の間の相関を調べた。

まず初めに,SRの存在下で金とプラチナそれぞれを含む陰イオン [AuCl4]-と[PtCl6]2-をそれぞれ還元し,金-白金合金クラスター[Au4Pt2(SR)8]0を合成した。同合金をカラムクロマトグラフィに掛け,構造が互いに異なるクラスターを計6種類分離した。

各クラスターの構造を単結晶X線構造解析(SCXRD)を用いて解析したところ,6種類のうち5種類で,6個の金属原子(4個のAuと2個のPt)が8面体を構成し,8つの面それぞれに1つのSRが結合して架橋されていた。

これら5種類のうち3種類のクラスター内の金原子間の距離は,バルク金におけるそれより長く,隣接する原子同士は結合していないと考えられたが,残り2種類では金原子同士の非結合距離より短い間隔で隣接していることが認められ,1D-CS構造が形成されたことが示唆された。

更に,これら5種のクラスターでは,それぞれのリガンドの相互作用の強弱により,クラスター同士の距離や回転角,光学活性や異方性の有無などが異なっていた。リガンドがクラスター間で一様に分布している場合,クラスター間の斥力が強まり,1D-CS構造の形成が妨げられていることもわかった。

この研究は,個々の金属クラスターから,目的とする立体構造をボトムアップで形成させる設計のガイドラインとなりえるという。よりコンパクトで多様な機能を持つナノ材料の作成や,それに伴う電子デバイスの一層の高機能化への道が開けるとしている。

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