立命大,院内感染症薬開発に適した蛍光プローブ開発

立命館大学,米ラトガース大学の研究グループは,院内感染症の治療薬の開発に役立つ蛍光プローブ(標的となるタンパク質に強くくっついて光る分子)を開発することに成功した(ニュースリリース)。

2017年,研究グループは新しい院内感染菌MRSAに効く抗菌薬として,MRSA内で働くFtsZというタンパク質に結合する薬を開発した。FtsZはMRSAが増殖するときに働くタンパク質。薬がFtsZに結合するとFtsZの働きがにぶり,MRSAは増殖できなくなるため死滅する。実際にこの薬はMRSA感染症の治療に効果があり,第I相試験(フェーズI)まで開発が進んでいる。

研究グループは,これらの薬の効果を確認するため,どのようにFtsZに結合するのかを原子レベルで観察した。実験で使用した薬には,メチル基という突起があるものを使用した。FtsZに結合する際,その突起が分子の内側から外に向かっていた。

この薬の構造をみて,この突起の先に蛍光分子を結合することができるのではないか,そうすればこれまで存在しなかったFtsZに強く結合する蛍光プローブができるのではないかと考えた。

FtsZに強く結合する蛍光プローブが開発できれば,現在開発中の薬をさらに改良することができる。そこで,このメチル基の先に蛍光分子を結合させて実験した。その結果,従来の蛍光プローブに比べFtsZに約10~100倍強く結合する蛍光プローブであることが分かった。

さらに,元々はMRSAのFtsZにのみ結合すると思われたこの蛍光プローブが,肺炎桿菌や緑膿菌といった他の院内感染菌のFtsZにも強く結合することが明らかになった。

この蛍光プローブを使うことで,様々な種類の化合物群の中からMRSA以外の院内感染菌のFtsZに結合する新しい薬を素早く同定(ハイスループットスクリーニング)することも可能となった。この研究により院内感染症の治療薬開発に役立つ技術が開発できたことから,今後,院内感染に対する効果的な薬が開発されることが期待されるという。

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