米ハワイ大学,海洋研究開発機構,千葉大学,愛知県立大学の研究グループは,次世代型の気象衛星ひまわり8号の観測データを用いて,日本の植物が季節によってどう変化するのかモニタリングを行なった結果,葉が開く展葉時期や葉が落ちる落葉時期などの季節変化を約4日という短い間隔で頻繁に捉えることに成功した(ニュースリリース)。
植物の集団は植生と呼ばれ,温室効果ガスである二酸化炭素の吸収源としての役割も担っており,植生が季節によってどのように変化するのかといった,植物季節を把握することは,二酸化炭素の排出削減目標を達成するためにも重要となる。これまで,人工衛星による植生モニタリングが試みられてきたが,雲が観測の妨げになるという課題があった。
次世代型静止軌道気象衛星のひまわり8号では,地球の自転とともに地球の回りを移動するため,地球上からは常に同じ場所にある。このため,10分単位で地表面の同一地点を観測し,カラー画像として記録することで,雲の晴れ間が出た際に地表面をクリアに観測することができる。
今回,研究グループは,このひまわり8号の観測データを植生モニタリングに適用し,日本国内の植生観測がどの程度向上するのか解析した。
2016年のデータを解析した結果,ひまわり8号では,従来型の極軌道衛星である米のSuomiNPP衛星と比較して,約26倍の頻度でデータを取得できることがわかった。また,ひまわり8号の方が雲のないデータを多く得られることもわかった。
観測地域に台風が到来した前後では上空に雲が連続してかかってしまい,良質なデータが得られないことが一部あったが,それ以外では,雲のないデータを取得するのにかかる日数の間隔が,従来型の衛星では7〜16日であったのに対し,4日程度で得ることができた。
さらにひまわり8号では,植物の量や活力を表す植生指標(植生による光の反射の特徴を用いて,簡易な計算式で植生の状況を把握することを目的として考案された指標)の季節変化として,春の葉が開く展葉時期から,秋の葉が落ちる落葉時期までの植生の変化をほぼ連続的に取得できた。
また展葉や落葉といった植生変化は現地観測で得られた樹木のカメラ画像ともよく一致しており,展葉時期に植生指数が増大し,逆に落葉時期には植生指数が減少することを正確にとらえられることもわかった。
今後,ひまわり8号による植生モニタリングの対象領域を広げ,東南アジアなどの雲が多い熱帯地域においても植生の変化を観測することで,植生に対する気候変動の影響について科学的な知見を提供できることが期待されるとしている。