東芝は,目視や通常の画像検査では検知するのが困難な小さなキズや異物を瞬時に可視化するワンショット光学検査技術を開発した(ニュースリリース)。
近年,製造現場において,労働者不足の解決や製造コスト削減の観点からIoTやAIを使った作業効率化が進んでいるが,表面検査などの品質検査においては,小さなキズや異物を漏れなく検知するため,いまだに熟練者による目視や触感を駆使した検査が主流となっている。
表面検査を自動で検査する方法として光学検査技術が有効とされている。物体は入射された照明の光を反射するが,対象物にキズがない場合,入射角と反射角が等しくなる正反射光となるのに対し,キズがある場合は入射光が様々な方向に反射する散乱光となる。
この特徴を生かすことによりキズの検出が可能だが,従来のレンズによる撮像ではレンズを通すことで光が一点に集中し散乱光の方向情報が失われ,周囲と微小な差しかないキズや異物などを検出することは困難だった。
そこで同社は散乱光の散乱角度の違いを検出するのに適したテレセントリックレンズを用い,光の散乱角度を色で選別するカラーフィルターと組み合わせた独自手法により,微小なキズから生じる散乱光の角度分布をワンショットで撮像できる光学検査技術を開発した。
この技術を適用した装置を用いることで,散乱光の角度によって色分けされた画像が取得できる。そのため,キズや異物の領域を周囲と異なる色で画像として出力し,容易に検知することが可能になった。
また,動く対象物を検査することも可能だという。製造ライン上での欠陥検査や,稼働中の装置の摩耗状況の検査にも活用でき,検査のために装置を停止させる頻度を減らし,稼働率の向上も期待できるとしている。
また,この技術は既存設備の大幅な改造を必要とせず,レンズやカラーフィルターを変更することで様々な大きさ・種類の対象物に対応することができる。ここで用いた散乱光を検出する技術は,照明の光学設計(第22回光設計賞優秀賞)にも用いてきた独自の解析技術。
同社は,検出感度を上げ,2020年度以降の実用化を目指し研究開発を進めていく。また,この技術の詳細は,11月7,8日にグランドニッコー東京 台場(東京都港区台場)にて開催される「TOSHIBA OPEN INNOVATION FAIR 2019」にて展示する。