北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)と太陽誘電は,グラフェンを用いた超高感度においセンサーを共同開発すると発表した(ニュースリリース)。
JAISTは,原子層材料グラフェンを用いた独自のNEMS(Nano-Electro-Mechanical Systems: ナノ電子機械システム)技術を用いて,グラフェン表面に物理吸着した単一CO2ガス分子によるグラフェンの微小な電気抵抗変化を,室温で検出時間<1分で高速検出する抵抗検出方式の単分子レベル気相センサーの原理検証に成功している。
この抵抗検出方式グラフェンセンサーはグラフェンとガス分子間の化学反応を用いておらず,吸着を加速する目的で印加している基板電界を切れば吸着分子は自然に脱離する。つまりセンサーのリフレッシュ動作は必要なく,素子のライフタイムを飛躍的に長くできる。
最近では,この基盤技術を応用展開し,室温大気圧雰囲気下で濃度~500pptの極薄アンモニアガスに対して,検出時間<10秒で高速検出することにも成功しているという。
また,グラフェンRF振動子を用いた質量検出方式グラフェンセンサーの基盤技術も開発。現在のQCM(Quartz Crystal Microbalance:水晶振動子マイクロバランス)センサーの質量検出限界が数ピコグラム(10-12g)レベルなのに対し,濃度~数ppbのH2/Arガス中で,グラフェン振動子表面に吸着した分子による質量の増加を,室温で100ゼプトグラム(1zg=10-21g)レベルで検出している。これは,従来のQCMセンサと比較して約7桁の質量感度向上にあたるという。
一方,太陽誘電は,これまでQCMを用いたにおいセンサーの開発を行なってきた。開発中のセンサーシステムは,①QCMセンサーアレイモジュール,②センサーコントロールユニット,③クラウド処理の3つの構成要素からなっている。
共同開発では,両グループの相補的な世界的卓越技術を融合させ,犬や線虫の嗅覚能力に迫るpptレベルの超高感度を可能とするマルチセンサアレイ方式パターン分析超低濃度・超微小量においセンシング技術を開発する。
またこれを,①皮膚ガス検知によって未病検出や精神的ストレスモニタを可能とする高機能ヘルスチェックシステムや,②シックハウス症候群の原因となっているVOC(揮発性有機化合物)など生活環境汚染モニタリングシステム開発に発展させるとしている。