東北大学と日本電気(NEC)は,量子アニーリングマシンを活用したSI実務の高度化を推進する共同研究を開始した(ニュースリリース)。
SIビジネスには,2025年にIT技術者43万人の人材不足,膨大なソフトウェア・サービスへの対応,生産性の向上による企業価値の強化,などの事業課題がある。これらの課題に対して,NECではAIを活用したSI技術の高度化( SI支援AIシステム)の研究開発を進めている。
今回の共同研究は,このSI支援AIシステムで必要となる膨大なソフトウェア・サービスの組み合わせ最適問題計算や,膨大な学習データの作成に量子アニーリングを活用することで,加速を続けるSIビジネスのスピードに対応できるシステムの実現を目指すもの。以下の2つが課題となる。
①量子アニーリング導入によるシステム自動設計の超高速化
ITシステム導入に伴うSI実務は,顧客の要件を満たすようマシンやソフトウェア・サービスなどのリソースとその設定値の組合せを見つける組合せ最適化問題と捉えられる。NECでは,顧客要件の情報を元にシステム設計を自動化するAIの開発を行なっているが,現状,要件を最も満たす組合せ(最適解)を発見するのに膨大な時間がかかる。
今回,共同研究を行なうことで制約条件を量子アニーリングで高速に求解し,最適化されたシステム設計を高速に導出することを目指す。
②量子アニーリングの確率的動作を利用したAI学習データの拡充
SI支援AIシステムを開発するにあたり,量子アニーリングを活用してAI実務に関する学習データの拡充についての研究を行なう。
従来のコンピューター上のプログラムで生成可能なデータではなく,量子アニーリングマシンの確率的な動作を活用し,予測可能な生成ルールが存在しないが,学習データとしての条件は満たしているデータを作成する。
東北大学では,量子アニーリング方式の量子コンピューティング利用技術の研究を行なっており,日本における効率的運用・研究開発の促進を目的とした量子アニーリング研究開発コンソーシアムも設立している。
今回,NECの実務経験で形式化されたSIビジネス課題の量子アニーリングによる解決に共同で取り組む。さらにその結果を共有し,量子コンピューターによるSI支援AIシステムの実用化を加速するとしている。