名古屋大学とオランダ・グローニンゲン大学の研究グループは,光に応答して活性化する化合物を開発し,哺乳類の培養細胞やゼブラフィッシュにおいて,概日リズムのスピードを精密に調節することに成功した(ニュースリリース)。
概日時計は睡眠・覚醒などのさまざまな生理現象に見られる1日周期のリズムを支配し,その機能が乱れると睡眠障害などの疾患に影響を及ぼすことが指摘されている。そのため,概日時計の機能を精密に調節することができれば,生物が1日の時間を測る仕組みの理解だけでなく,疾患治療に向けた起点ともなる。
研究グループは以前,細胞内の時計タンパク質のリン酸化に関与するCKIタンパク質を標的として概日リズムのスピードを強力に遅らせる化合物を発見し,「longdaysin」と名付けた。今回,研究グループはこの化合物を改変し,暗い時には作用を示さず,光が当たると活性化してCKIを阻害するような化合物「DK359」を開発した。
この化合物を用いることで,哺乳類の培養細胞や組織,さらには生きたゼブラフィッシュにおいて概日リズムのスピードを光によって精密に調節する(遅らせる)ことが可能になったという。研究グループは今回の発見により,概日時計のメカニズムの解明と疾患治療に向けた応用に新たな道が拓けるとしている。