国立天文台,早稲田大学の研究グループは,すばる望遠鏡,ケック望遠鏡,およびジェミニ北望遠鏡を使った観測により,地球から130億光年かなたの宇宙に12個の銀河からなる「原始銀河団」を発見した(ニュースリリース)。
現在の宇宙には,10個程度の巨大な銀河を含む1000個程度の銀河の集まった「銀河団」が存在している。銀河団は宇宙の構造の要で,138億年の長い宇宙の歴史の中でどのように銀河団ができていったのかは天文学における重要な問題となる。
銀河団の形成起源に迫るために,天文学者たちは銀河団の祖先だと考えられている「原始銀河団」を探してきた。原始銀河団は初期宇宙に存在する形成途中の銀河団で,10個程度の銀河が密集している天体のこと。
今回,原始銀河団はいつの時代からあったのか調べるため,研究グループは広い視野を持つすばる望遠鏡の最新撮像装置であるハイパー・シュプリーム・カム(Hyper Suprime-Cam)を使い,広大な領域の宇宙の地図を作り,原始銀河団の探査を行なった。
探査の結果,銀河が予想に比べて15倍密集している原始銀河団の候補「z66OD」をくじら座の方角に発見した。さらにケック望遠鏡およびジェミニ北望遠鏡による追加分光観測により,12個の銀河が地球から129.7億光年先(赤方偏移z=6.6)の位置に存在していることを突き止めた。
12個の銀河は3次元図の中でも密集し,この観測結果からz66ODは,129.7億光年かなたの宇宙に存在する原始銀河団であることがわかった。これはこれまで最も昔の原子銀河団とされていたSDF原始銀河団の記録を約1億光年も塗りかえる,現在知られている中で最も遠い原始銀河団の発見としている。
z66ODにある12個の銀河の中には,2009年にすばる望遠鏡によって発見された巨大ガス雲天体「ヒミコ」がいた。これは銀河団と巨大銀河の関係を理解する上で重要な手がかりになるという。
さらに研究グループはすばる望遠鏡,イギリス赤外線望遠鏡,スピッツァー宇宙望遠鏡の観測結果をもとに,z66ODの中の銀河では,同じ時代,同じ重さの他の銀河に比べて5倍もの星が生まれていることを見つけた。
今回の発見により,活発に星を作りながら銀河団へと成長する原始銀河団が,宇宙年齢が8億年の時代(現在の宇宙年齢の6%以下の時代)の初期宇宙に既に存在していたことがわかった。
近年の観測により原始銀河団には,塵に覆われた巨大な銀河も存在していることがわかってきている。研究グループは今後,アルマ望遠鏡などの観測が進むと,そのような巨大銀河も見つかり,z66ODの全貌が明らかになるかもしれないとしている。