阪大,安価な原料から重水素を選択的に製造

大阪大学の研究グループは,独自に開発した触媒を用いて,安価なギ酸(HCOOH)と重水(D2O)を原料とし,高価な重水素(D2およびHD)を選択的に作り分けて製造することに成功した(ニュースリリース)。

特殊ガスの重水素は水素(H2)の同位体化合物で,化学・生物学の実験研究用試薬や,半導体,光ファイバーなどの製造工程でも使用される。現状,エネルギー多消費型のプロセスで合成されているため非常に高価で,また,日本ではそのほとんどを海外からの輸入に頼っているため,触媒技術を用いた簡便な合成法が望まれていた。

ギ酸(HCOOH)は安価で安全(非可燃性,非爆発性,毒性が低い)な液体で,かつ水素貯蔵密度が高いことから,次世代のエネルギーキャリアとして近年非常に注目されている。これまで研究グループは,塩基性シリカに数ナノメートルの大きさの微細なPdAg(パラジウム-銀)合金ナノ粒子を担持した触媒が,ギ酸を分解して水素を製造する優れた金属触媒となることを報告してきた。

今回,この触媒を重水(D2O)中でのギ酸分解に用いると,高価な重水素(D2)が高効率で生成することを発見した。さらに,表面の塩基性を変えるだけで,重水素(HD)を任意に作り分けることに成功した。

特に,弱塩基性フェニルアミン基を修飾した触媒では,D2が87%の選択性が得られ,強塩基性トリエチルアミン基で修飾した触媒はHDの選択性が80%に達した。研究成功の鍵は,固体(触媒)表面上でのH-D交換反応を塩基性の違いを利用して制御できた点にある。

今回開発した触媒は,調製が極めて簡便,安定性が高く分離・回収が容易,塩基性を制御することで目的の重水素を任意に得られる,など実用化に不可欠な基盤要素を兼ね備えているという。

研究グループはこれにより,今後の世界的な需要拡大が予想される重水素の低コスト製造法として期待でき,また今回発見した触媒反応は,特定の条件では量子トンネル効果に支配されていることを速度論的な解析および理論計算を用いて証明し,学術的な意義も極めて高いものとしている。

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