東京理科大学は,電場中でのコロイド粒子の運動を説明する理論研究を取りまとめ,運動を記述するための新たな方程式を導いた(ニュースリリース)。
電解質水溶液中でのコロイド粒子の振る舞いを理解することは,コロイド粒子の分散安定性の評価と,溶液とも沈殿とも異なる特異な性質を持つコロイドを利用した新たな機能性材料の開発や,医療・ナノテクノロジー等への応用にも繋がると期待されている。
コロイドが持つ多くの性質はその粒子のサイズに起因しており,粒子がサイズを維持するためには,粒子の表面の電位(ゼータ電位)が特に重要なる。
分散媒中に安定して分散するコロイド粒子は,2層の電位構造(電気二重層)に取り巻かれている。第1層は粒子表面に密着し,第2層は第1層と逆の電荷を帯びて,第1層の周りを取り巻いている。
コロイド粒子に攪拌など外的な力が加わると,一部の電荷は粒子から引き離されて分散媒と共に移動し,粒子に随伴した電荷との間で電気的な境界面をつくる。この面をすべり面と呼び,すべり面上にゼータ電位が発生する。
ゼータ電位の導出には,電気泳動を行なう際の粒子の電気泳動移動度が使われている。これまでの理論では,粒子の表面の流体力学的解釈に,流体の「すべりなし境界条件」と呼ばれる仮定が使われてきた。
すべりなし境界条件は水を分散媒としたとき表面に水の分子を吸着するタイプのコロイドのゼータ電位を導出するのに向いている。その一方で,すべりなし境界条件では,水との親和性が小さく,表面で水をはじくタイプのコロイド(疎水コロイド)のゼータ電位をうまく計算することができなかった。
今回,これまではばらばらに計算されていた,コロイドの電気泳動や電位,分散などの情報を1つにまとめ,コロイド粒子の動態の基本原理を説明する界面動電方程式を新たに導いた。
この理論は,親水コロイド・疎水コロイドの運動の統合的な説明を可能にするもので,コロイドの帯電状態や安定性の正確な評価につながるという。
今回の研究で,コロイド粒子表面の電位が粒子の運動に果たす役割が明らかとなったことにより,人工的に電位を調整し,コロイドの流動性を制御できる可能性がでてきた。コロイドの流動性の制御が可能となれば,機能性材料への利用に弾みがつくなど,工業的な活用に繋がるとしている。