米OUSTERは,同社の画像も撮れるLiDARのラインナップとして,最上級となる128レイヤーモデルに自動運転向けのロングレンジ製品を投入する。
同社は2015年に設立のアメリカのベンチャーで,同じくLiDARを製造する米Quanergy Systemsのスピンアウト企業。同社が製造するLiDARは,業界最大手のVelodyne Lidar同様にレーザーとディテクターを機械式に回して周囲360°の測距を行なう筒状の装置となっている。
同社のLiDARの特長の一つに低価格なことが挙げられる。ラインナップは解像度を決定するレイヤー(ライン)数によるが,この数を一部Velodyneのラインナップと重複させることでコストメリットをアピールしている。
具体的には,最上位となる128レイヤーモデルの価格はVelodyneが日本円で約1000万円とも言われているが,それに対して同社の製品(ショートレンモデル)は僅か18000ドル(約200万円)となっている。同社は定価を公表することで,一部モデル以外価格を公表しないVelodyneにプレッシャーをかける狙いがあるようだ。
この驚異的とも言える低価格を実現しているのが独自の光学系だ。Velodyneが1レイヤーにつき1対のレーザーとディテクターを用いるのに対し,OUSTERは独自のVCSELレーザーアレー(850nm)による光源と,SPAD(single photon avaranche diode)のASICによる受光部を組合わせたモジュール1つで動作するフラッシュLiDAR方式を採用することにより,部品点数を1/100~1/1000と大幅に減らすことに成功している。
もう一つの大きな特長は,点群データの他に64×1024の解像度で画像のRAWデータを出すことができることだ。ここにはXYZの座標に加え,シグナルフォトンの強度,ノイズデータが含まれるており,現在,このデータから画像認識によって人や車を判別するプログラムを実装する試みも行なわれているという。
この画像は低解像度カメラ並みの画質があり,路面の文字もはっきりと読み取れることから,これまでの自動運転もしくはADAS技術においてカメラが担ってきた役割の一部を代行することも可能と思われる。かつて取材をした自動運転の研究室では,この画像を使って自己位置推定技術,ビジュアルSLAMが可能になるとの声もあった。
同社の製品ラインナップは,ショートレンジの16,64,128レイヤーモデル(反射率80%において検出距離120m)とロングレンジの64レイヤーモデル(同反射率にて検出距離250m)があるが,ここにロングレンジの128レイヤーモデルが追加されるという。価格はショートがそれぞれ3500,12000,18000ドル,ロングレンジの64レイヤーモデルが24000ドル,128レイヤーモデルは未定としている。
また,現在はモジュールを機械式に360°回転させているが,光学系がソリッドステートに適しているため,回転機構を廃して視野角を固定したソリッドステートモデルも,来年の後半に投入する予定だとしている。