エア・ウォーターのグループ会社で,8K映像技術を応用した医療機器を製造・販売するカイロスは,新技術を搭載した8K手術用ビデオ顕微鏡システム「Micro eight」を開発し,2019年9月2日より販売を開始する(ニュースリリース)。
「手術用顕微鏡」は,微小な血管や神経,リンパ管の吻合(分離している血管や神経をつなぎ合わせること)等の微小外科手術(マイクロサージャリー)に不可欠な医療機器として,その市場は今日まで世界的に拡大している。近年では,がんの手術などで切断されたより微小なリンパ管等を吻合する超微小外科手術(スーパーマイクロサージャリー)が行なわれ始めている。
今回販売する製品は,70型8Kモニターと8Kカメラを搭載したロボットアーム、システムカートで構成されたシステムで、焦点距離の異なるレンズを術式に合わせて交換することで,より高精細な画像で超微小外科手術(スーパーマイクロサージャリー)を可能にする。これにより,細胞レベルまで精細に観察することが可能になるので,微小血管やリンパ管の吻合など,難易度の高い手術や治療がより安全にできるようになる。
このシステムの最大の特長は,8Kカメラと被写体との距離・角度・光源を,緻密に計算された適正な位置に調整し,単眼ながら8K高精細画像の立体視を実現した点にある。8K高精細画像が持つ「臨場感・実物感」の特長を活かし,意図的に影を作り立体感を創出し(ドロップシャドー効果),3Dメガネを使用せずに自然な立体視が可能。また,高精細で浅くなりがちな焦点深度も,軸を一定角度に傾斜させることにより深度を深めることに成功した。
このシステムでは,接眼レンズを長時間覗く姿勢を強いられないため,執刀医は大型モニターを見ながら,頭を上げたままの姿勢で手術を行なえる。さらに,執刀医と医療スタッフ等が,大画面を共有することで,術中の細かい注意点を視覚的に学ぶことが可能になり,研修医や学生に対してより効果的な教育も行なうことが可能となるという。カイロスはこの製品を形成外科,脳神経外科,心臓外科等に対応する医療機関を中心に販売し,販売目標は3年間で100台(レンタル含む)としている。なお、販売価格は6,500万円からを想定する。
8K高精細顕微鏡の技術は,手術以外にも病理検査や再生医学など幅広い応用が見込まれている。さらに,医療分野に留まらず,製品の品質・精密検査等の用途として産業分野でも多岐にわたる需要が期待されている。カイロスは,8K高精細顕微鏡の技術を応用し,医療分野での活用だけでなく,将来的には計測などの用途も開拓していくとしている。