龍谷大,光でシロアリの翅の表面構造を再現

龍谷大学は,2種類のジアリールエテン分子を混合した結晶膜に光を当てることで,シロアリの翅(はね)が示す二重濡れ性を再現した結晶表面を開発した(ニュースリリース)。

近年,生物の微細な表面構造や生産システムを模倣することで,新しい材料作り・科学技術に役立てようとするバイオミメティクス(生物模倣科学)の研究分野が盛んに研究されている。

研究グループは,光を照射すると色を可逆的に変えるフォトクロミック化合物,特に熱的な安定性を有するジアリールエテンという化合物を用いて光を照射して光応答する機能材料を研究してきた。ジアリールエテンは,光で何回も閉環・開環反応を繰り返し,結晶状態でもフォトクロミズム(光の照射で物質の色が可逆的に変化する現象)ができる。

研究グループは,ジアリールエテンの結晶薄膜に紫外光を照射し,暗所下室温で1日静置すると,閉環体の針状結晶(高さ約10μm,幅約1-2μm)が膜表面に成長することを見出し,さらに,その表面は水滴の接触角が160°を超える超撥水性を示すことを報告した。また,その膜に可視光を照射すると,針状結晶は融解して元の平坦な表面へと戻り,接触角も元の値に戻る,光による可逆的な濡れ性の制御も達成している。

今回の研究では「Nasutitermes sp.」というオーストラリアに生息するシロアリの翅の表面構造に注目した。このシロアリは,天敵からの攻撃を避けるために,新しいコロニーへと飛び立つとき,あえて雨季に飛び立つ。そのため,その翅には水を効率よく弾く機能が備わっている。

研究グループは,このシロアリの翅の構造を再現すべく結晶膜を作成した。実際に,紫外光を照射するとフォトクロミック反応を起こし,2種類の異なる大きさの結晶(大きい結晶は高さ約16μm,幅約1.5μm,小さい結晶は高さ約1.9μm,幅約0.2μm)が表面上に並んだ結晶膜が作製できた。この表面構造は,予想通りシロアリの翅の表面構造と非常に類似していた。

そこで,作成した表面に霧吹きで小さな水滴を吹きかけると,直径が約100μm以下の水滴は吸着し,それ以上の水滴を弾いた。これらの水滴のサイズは,それぞれ霧,雨滴のサイズと一致し,構造を真似ることでシロアリが示す大きな水滴を弾き,小さな水滴を集める機能を再現することに成功したという。

研究グループは,このような表面は,名古屋セントレア空港の窓材のように人が介在することなく表面をきれいに保つセルフクリーニング材料に利用できるだけでなく,空気中の霧から水滴を捕集できる材料,水滴を保持できる機能材料としての応用もできるとしている。

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