九大,光学活性キラル分子の新しい調製法を開発

九州大学の研究グループは,キラル分子を光学活性体として得るための新手法の開発に成功した(ニュースリリース)。

分子の中には,右手と左手の様に鏡像体の関係にある異性体(鏡像異性体,エナンチオマー)を有するキラル分子が数多く存在する。医薬品の多くもキラル分子で,その生物活性(薬効,毒性など)が鏡像異性体間で大きく異なるために,一方の鏡像異性体のみを選択的に製造する必要がある。

そのために従来は,両鏡像異性体の混合物(ラセミ体)を分離する手法,もしくは一方の鏡像異性体を選択的に合成する手法が用いられていたが,効率性,経済性などに問題があった。

これに対して研究グループはキラル分子の一方の鏡像異性体のみを選択的に製造する手法として「動的不斉誘起法(dynamic asymmetric induction: DYASIN ダイアシン)」を開発した。

その骨子は,結合回転によって両鏡像体が容易に相互変換(ラセミ化)し得る「動的キラル分子」(dynamic chiral molecule: DYCM)の立体化学を外的キラル因子(outer chiral source: OCS)の影響で変化させることにある。

具体的には,ラセミ体のDYCMをOCSの環境下におくことで,それからの不斉誘起で鏡像異性体間の偏りを生じさせて光学活性体とする。その後に,得られた光学活性体のDYCMはそのままではラセミ体に戻ってしまうので,ラセミ化が十分に遅い低温下で静的キラル分子(static chiral molecule: STCM)に立体特異的に変換する。

今回の研究では,DYCMとして面不斉9員環アミン分子1を,OCSとして多糖誘導体キラル固体を用いて検討した。その結果,空気中,室温下に両者を混合し,放置するだけで,光学活性な1を最高98%ep(エナンチオマー純度)で定量的に得ることに成功した。またそれを炭素中心性不斉を有する種々のキラル分子に光学純度を損なうことなく変換することに成功したという。

DYASINではラセミ体の原料から簡単に一方の鏡像異性体を高い純度で得ることができる。それを直ちに変換(transformation)することで鏡像異性体間で相互変換しないキラル分子(静的キラル分子)の光学活性体が効率的に得られる。

研究グループは,このDYASINは従来の光学分割法や不斉合成法とは一線を画すもので,光学活性なキラル医薬品やキラル機能性材料の効率的製造法としての応用が期待できるとしている。

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