名古屋大学の研究グループは,これまで実用化されていないマイナス150°Cに至る低温用の熱電素子に使用できる高性能材料を発見した(ニュースリリース)。
熱電変換は,「冷やしたいものだけを冷やす」局所冷却など,幅広い応用が期待されている。しかし,マイナス100°C以下の温度域では高性能な材料が得られておらず,ビスマス系の材料を利用した赤外線センサー冷却など,室温付近における限られた実用に留まっていた。
今回の研究では,タンタル(またはニオブ)とケイ素を含むテルル化物Ta4SiTe4(Nb4SiTe4)に対して,チタン(Ti)を添加することにより得られた針状試料が,低温で優れたp型の熱電変換性能を示すことを見出した。
冷却能力の目安となる出力因子はマイナス60°Cにおいて最大値60μWcm-1K-2に達し,0°Cからマイナス150°Cの幅広い温度範囲でビスマス系実用材料の室温における値(約35μWcm-1K-2)を超える大きな値を示した。
研究グループは,これまでの研究によりモリブデンを添加したTa4SiTe4が低温で優れたn型の熱電変換性能を示すことを発見していた。今回,p型とn型のTa4SiTe4針状試料を組み合わせた素子を試作し,熱電冷却による温度降下を確認した。
研究グループは,これらのp型とn型の材料を組み合わせることにより,マイナス100°C以下の低温で実用水準に達する熱電変換素子の実現が期待でき,これまで大掛かりな装置で低温に冷やしてから使っていた各種デバイスや材料の局所冷却,液化天然ガスの冷熱を用いた発電などの実用化に貢献するとしている。