産業技術総合研究所(産総研)と東北大学は,微小なGaN(窒化ガリウム)LED(マイクロLED)の高効率化技術を開発した(ニュースリリース)。
マイクロLEDを高密度に配置したマイクロLEDディスプレーは,次世代のウエアラブル情報端末のための高効率・高輝度・高解像度のディスプレーとして期待されているが,従来の作製法ではLED側面の加工損傷が大きいため,サイズが小さくなると発光効率が著しく低下することが大きな問題になっていた。
今回,研究グループは加工に伴う損傷が極めて少ないことが知られる中性粒子ビームエッチング技術を,GaNマイクロLEDの作製に用いることで,LEDのサイズを6μmまで小さくしても発光効率の低下がほとんどないGaNマイクロLEDを開発した。
中性粒子ビームエッチング技術と,比較のため従来の誘導結合プラズマエッチング技術を用いて,40μm角,20μm角,10μm角,6μm角の4種類のGaNマイクロLEDを作製した。このマイクロLEDのLEDウエハーには,有機金属気相成長法によってサファイア基板上に成長させた青色発光するものを用いた。
また,LEDの活性層として5重のGaN/InGaN(窒化ガリウム・インジウム)多重量子井戸構造を用いた。マイクロLEDからの発光はp型Ni(ニッケル)/Au(金)半透明電極側から取り出した。
従来の誘導結合プラズマエッチング試料の場合,LEDのサイズが20μm以下になると,ディスプレー動作に特に重要な低電流密度領域(20A/cm2以下)では発光効率が急激に低下していた。これに対して今回の中性粒子ビームエッチング技術で作製したマイクロLEDの発光効率は,サイズ依存性をほとんど示さず,サイズを6μmまで小さくしても発光効率はほとんど低下しなかった。
6μmのマイクロLEDについて電流密度5A/cm2での発光効率を比較すると,中性粒子ビームエッチング法で作製したものは誘導結合プラズマエッチング技術で作製したものより約5倍高い発光効率を示した。サイズ6μmのマイクロLEDを解像度に換算すると,仮想現実/拡張現実用ヘッドマウントディスプレーに必要な2000ppi以上の超高解像度も可能になるという。
研究グループは今後,フルカラーマイクロLEDディスプレーの実現に向けて,この技術を用いた緑色および赤色マイクロLEDの作製を進めるとしている。