東京理科大学とメキシコのソノラ大学は,液晶ディスプレーに用いられる新材料,IGZOの一タイプであるInGaZnO4(IGZO-11)のセンチメートルスケールの大型の単結晶の合成に成功した(ニュースリリース)。
IGZO-11は透明性と導電性の両方を兼ね備えた半導体としてオプトエレクトロニクスデバイスへの応用が期待されているが,その物性には未知の部分が多い上,物性研究に必要な大型の単結晶の合成にはこれまで成功していなかった。
研究グループは単結晶を作るために,IGZO-11が大気圧下では分解溶融型物質(結晶性固相は溶融過程で元の組成とは異なる組成を持った第2の結晶相と液相に分解される物質)である可能性があるという事実を踏まえ,光学式浮遊帯域法(OFZ)を選んだ。気圧を上げることで蒸発や気化を抑え,液相から良質の単結晶を成長させることに成功した。
OFZを使うことにより,容器を必要とせずに高品質の酸化物単結晶を成長させることができるため,液体材料が受ける温度および圧力に対してより確かな制御が可能となる。研究グループは合成にZnリッチの供給ロッドを使用することで,Zn欠損のレベルを制御することができた。
その合成した単結晶の物理的性質を調べると,育成された単結晶は青みを帯びているが,酸素雰囲気中でのポストアニーリング処理により,結晶は透明になった。結晶中の酸素欠陥によって生成された電子キャリアは,赤色光を吸収して青色光を放出する。このことから研究グループは色の変化を単結晶がアニーリングされるときに,この酸素が空孔を満たすことと関連付けた。
さらに研究グループは単結晶の電気伝導度,移動度,キャリア密度の温度依存性を測定した。その結果,酸素雰囲気下でのアニールにより電気的特性を制御できることを突き止めた。ポストアニールによって,室温でのキャリア濃度と導電率が1017~1020cm-3及び1~2000Scm-1の範囲内で制御することができたという。
研究グループは,このIGZO-11はワイドバンドギャップ,高い電気移動度,導電性などの特性を持つ半導体で,将来的にタッチディスプレーや有機LEDなどの透明オプトエレクトロニクスデバイスへの応用が期待できるとしている。