いよいよ車載が本格化,海外ティア1 LiDARの実力とは

MagnaとInnovizのLiADAR

自動車業界の一次請け企業であるティア1は,自動運転向けセンサーであるLiDARのラインナップ拡充を進めている。特に海外勢は高い技術を持つスタートアップに出資することで,いよいよ量産車への搭載を射程に入れた製品も登場し始めた。ここでは5月22日~24日,パシフィコ横浜で開催された自動車関連展示会「人とくるまのテクノロジー展」で展示されたLiDARと周辺技術を紹介する。

売上高において独Bosch,デンソーに次ぐ規模のティア1であるカナダのMagna Internationalは,イスラエルのLiDAR開発スタートアップ,Innoviz Technologiesに出資している。今回,Innovizが開発したLiDARが国内で初めて展示された。InnovizのLiDARはMEMSベースのソリッドステート技術が特徴で,今回はその第1世代となる製品でデモを行なった。

ContinentalとASCのLiDAR

905nmのレーザーを使用しており,主な仕様は,検出範囲:150m,角度分解能(H×V):0.2°×0.45°,視野(H×V):73°×20°,フレームレート:20fps,寸法(H×W×D):73×66×165mm。この製品は現在購入可能で,価格は1台1万ドル(ソフトウェア込)となっている。

なお,今秋に登場する予定の第2世代の仕様は,検出範囲:最大250m,角度分解能(H×V):0.1°x 0.1°,視野(H×V):120°×25°,フレームレート:25fps,7.5Mピクセル/秒と大幅に向上しながら,寸法(H×W×D)は,45×110×95mmに収まるとしている。また,注目したいエリアに解像度を集中する機能も持つ。独BMWではこの第2世代の導入を決めており,2021年にはこのLiDARを搭載した車両の量産が始まる予定だという。

ZFとIbeoのLiDAR

独Continental Automotive Corporationは2016年に,米Advanced Scientific Concepts(ASC)からLiDAR事業を買収し,ソリッドステートであるFlash LiDARの開発を進めている。Flash LiDARは検出距離に弱点があるが,同社ではロングレンジの検出をレーダーで,ミドルレンジの検出をLiDARで行なうセンサーヒュージョンを前提としており,このLiDARの検出距離である50m(中央部)で問題無いとする。

使用するレーザーの波長は1064nm。1枚の点群画像を生成するのに,周波数の異なるレーザーを2回投射し,より高画質のデータを得られるとする。デモでは可視光画像とのヒュージョンのほか,車載をイメージした振動台にLiDARを載せたデモにより,車載に近い環境下でも鮮明な3Dデータを得られることをアピールした。

ValeoとIbeoの「SCALA」

このLiDARの主な仕様は以下。視野:120°×30°,解像度:182×32(4096)ピクセル,フレームレート:最大25Hz,寸法:100×120×65mm。同社ではこのLiDARが量産車に搭載される予定があるとしているほか,検出距離が短いことから比較的低速度で動く自動車,つまり,建設機械のような特殊車両への採用にも引き合いがあるとしている。

独ZF Friedrichshafenは,独Ibeo Automotive Systemsと共同開発したというソリッドステートLiDARの展示を行なった。顧客には詳細な諸元を渡しているとするが,現在のところ一般にはソリッドステートであること以外は何も開示していない。

富士フイルムの均一濃度板

ただし,ZFとIbeoはLiDAR事業においてオーストリアのamsとの協業を公表し,2021年にはVCSELを用いたLiDARを発表するとしていることから,今後はそちらの製品に移行するものと見られる。

一方,量産車(独Audi A8)へ世界初の搭載となったLiDAとして知られる,仏Valeoの「SCALA」もIbeoとの開発によるものだ。その「SCALA」は第2世代が発表されており,外見は殆ど変わらないものの,垂直方向の視野角が3.2°から10°と3倍になったことで路面のセンシングが可能となり,白線や規制などの路面表示を利用することができる。このモデルも量産車への搭載が決定しているほか,第3世代での実用化を目指すソリッドステートLiDARの開発も進めているという。

島津の分光光度計

国内企業からは,LiDAR開発のための周辺技術の展示が見られた。富士フイルムは近日発売予定のLiDARテスト用均一濃度板を紹介した。これまで車載機器のキャリブレーションには海外製の均一濃度板がディファクトスタンダードとして利用されてきたが,写真用濃度板でノウハウのある同社が新たにこの分野に参入する。

近赤外線800~1550nmで使用でき,反射率10%,50%,80%,サイズ900mm角タイプを標準品として用意する。アルミ複合版とドライマウントにより軽量(3kg)で野外での使用にも適しているという。マネキンなどの立体物に貼り付けるのは素材や形によるというが,平面であればサイズや濃度,形状などカスタムにも応じるとしている。

また,島津製作所はLiDARをはじめ,車載カメラやHUDといった車載光学機器について,光の角度に対する光学特性の評価をする装置として分光光度計を提案している。特にLiDARにおいては,カバー素材の光学特性がその性能に大きな影響を与えることから,検査装置として歴史のある分光光度計が自動車業界から注目を集めているという。

試料台が回転して自動的に計測するため,試料の位置を変更せずに様々な角度の透過率と反射率を得られる。対応波長は最大で250~2500nmまで計測可能なタイプもあるため,太陽光の範囲の波長をフォローすることができるとしている。

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