東大,超広視野高速カメラで超新星を発見

東京大学は超広視野高速カメラ「トモエゴゼン」を用いて超新星の新発見に成功した(ニュースリリース)。

宇宙に存在する水素とヘリウム以外の元素の多くは,超新星爆発の際に生成されたと考えられており,宇宙全体の進化を担ってきた重要な現象。近年特に,その爆発の直後を詳しく調べることで,爆発メカニズムや爆発前の最終段階の星の様子が詳細に理解できる現象と期待されている。

しかし,宇宙のいつどこで超新星爆発が起こるかは予言不可能で,一度に空の広い領域を監視観測することが必要となる。また,爆発後,超新星爆発による噴出物はどんどん宇宙空間に撒き散らされてしまうので,新しく爆発したばかりの超新星を1分でも早く自力で発見することが重要になる。

トモエゴゼンは,105cmシュミット望遠鏡の広い視野(直径9度,焦点面にて直径52cm)全面を84個のCMOSイメージセンサーで覆う超広視野高速カメラ。同型の4台のカメラユニットから構成され,現在,最後のユニットQ4の開発が急ピッチで進められており,2019年4月末完成予定となっている。

研究グループは2018年11月より,トモエゴゼン部分機(当時21枚のCMOSセンサーのみを搭載)を用いて空の広範囲の動画データの取得を開始し,このQ4の完成をもって,本格的な探査観測へと移行する。このような広域観測を1年間に100夜程度実施することで,爆発直後の超新星からの光をとらえるという。

トモエゴゼンを用いた超新星探査観測では,その超広視野観測性能を生かして,1晩の間に空の同じ領域を複数回観測することにより,超新星爆発直後の天体の発見を目指す。トモエゴゼンで次々に獲得する大量の観測データに対し,独自開発した解析ソフトウェアを用いて,超新星のように新しく現れた天体を即時に発見する。

今回,研究グループは,トモエゴゼンで2019年4月5日夜に天体を検出した。その後,国内外の望遠鏡により追跡観測を実施した結果,Ia型と呼ばれる種類の超新星であることがわかり,「SN 2019cxx」という名前がついた。発見時には爆発後10日程度(最大光度5日程度前)であったと考えられ,発見後も増光している。

研究グループは,今後,トモエゴゼンを用いた大規模な広視野探査観測を継続し,超新星の爆発直後の早期発見を行なっていくとしている。

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