レーザー学会は第11回レーザー産業賞に7社が受賞したと発表した。授賞式は4月24日から開催される光技術総合展示会『OPIE’19』の会期2日目となる25日に行なわれる。
この賞はレーザーに関する製品・技術の開発,実用化,普及などにおいて国内のレーザー関連産業の発展に貢献する優秀なものに対して表彰するもので,今回優秀賞にはトプコン,ギガフォトン,トヨタ自動車の3社が,奨励賞には三菱電機,QDレーザ,シャープ福山レーザーの3社が,貢献賞にはコヒレント・ジャパンがそれぞれ選出された。なお,対象製品・技術と評価のポイントは下記のとおり。
【優秀賞】・トプコン『3次元眼底像撮影装置 DRI OCT Triton』
Swept Source方式を世界で初めて搭載し,波長1μmを利用することで深層に届く優れたOCTを実現。医療用として実用化され,米国FDAの認可をとり,グローバル標準となっている。海外勢が優勢なOCT市場でシェア30%の実績を持ち,眼底診断に大きな貢献を果たした。高齢化社会に向けてOCTは成長市場であり,さらなる事業拡大も期待できる。
・ギガフォトン『ArF Immersion リソグラフィ用レーザ GT6XAシリーズ』
2009年度に本賞を受賞後,省エネルギー技術やガスの浄化再生利用を可能にするガス制御技術などにより,製品の完成度を一層高め,世界トップのシェア52%を得るに至った。この高いシェアは我が国のレーザー技術の高さを示すものと評価される。
・トヨタ自動車『TNGAエンジンの高速燃焼を実現するレーザクラッドバルブシートの量産化技術』
レーザー加工によりエンジン性能の大幅向上を図った。世界に先駆けてレーザークラッド加工技術の開発・適用により,自動車エンジンの熱効率40%かつ比出力60kW/Lの向上を実現,量産実用化した。また,工法の標準化によりグローバル展開を進めている。レーザーによる材料合成は,アディティブマニュファクチャリングの今後を占う上でも重要な技術と位置付けられる。
【奨励賞】
・三菱電機『車軸の検知が可能なETCシステム向けレーザ式車両検知器』
社会インフラである新世代のETCシステムにおいて新方式三次元レーザーセンサーを実用化し,産業,社会に貢献している。特に,広視野に対応するための長尺検出器の使用や,学習アルゴリズムの導入による全天候での検知確率の向上に新規性と独自性がある。非接触で車軸数の計測ができるなど,非常に完成度の高い技術である。今後の国際展開のポテンシャルも有している。
・QDレーザ『超短パルス1064nm DFBシードレーザ QLD106G-6410シリーズ』
独自の結晶成長技術とレーザー設計により,1μm帯のDFBレーザーでパルス幅15psを実現。ファイバレーザー用の種光源として用いることで,10ピコ以下の発生が可能になり,制御性の高いピコ秒加工が容易になった。競争の激しい加工分野における純国産ピコ秒レーザーを実現した。
・シャープ福山レーザー『520nm 130mW出力Single Mode緑色半導体レーザー GH0521DA2G/GH0521DA5G』
長波長化の困難な緑色半導体レーザーにおいて,単一モード,520nmで130mWの業界最高出力を実現,製品化した。また,これにより,レーザーディスプレー用RGB半導体レーザーを1社で提供できる体制を構築し,レーザーディスプレー製品の高品位化と開発効率向上に貢献した。
【貢献賞】
・コヒレント・ジャパン『最新レーザー技術導入とその応用提案による国内の科学技術および産業への貢献』
海外の最先端光・レーザー製品の輸入およびその応用提案により,光産業・学術分野の発展に寄与し,しいては我が国のメーカーのレーザーおよび光関連技術開発の促進に貢献してきた。