第34回櫻井健二郎氏記念賞が決定

開会の挨拶をする小谷専務理事(写真左),選考の経過を述べる荒川委員長(写真右)

光産業技術振興協会は,第34回櫻井健二郎氏記念賞が決定したと発表した。今回受賞したのは,浜松ホトニクスの『高性能量子カスケードレーザーの研究開発および実用化』と,三菱電機の『小型高出力平面導波路型レーザーの開発と風計測ライダーへの応用』の2件。

浜松ホトニクスの量子カスケードレーザーが評価された理由は,電子波動関数の精密な計算に基づく間接注入励起や結合上位順位構造(DAU)の発案により,極めて高い温度安定性と発光波長の広帯域化を実現し,製品化したこと。

下段左より荒川泰彦氏,平野喜仁氏(三菱電機),山西正道氏(浜松ホトニクス),小谷泰久氏,上段左より﨑村武司氏(三菱電機),山本修平氏(三菱電機),柳澤隆行氏(三菱電機),枝村忠孝氏(浜松ホトニクス),藤田和上氏(浜松ホトニクス),秋草直大氏(浜松ホトニクス)

同社では,単一デバイス内での中赤外2波長発振レーザーの共振器内差周波発生により,室温動作テラヘルツ発生を実現するなど,さらなる波長域の開拓にも取り組んでいる。この量子カスケードレーザーは,ガスセンシングなど各種計測への幅広い応用が期待されている。

三菱電機の平面導波路型レーザーが評価されたのは,高出力化が困難とされたEr,Yb:ガラス材料での単一モード光出力として平均24W,ピークで20kWという最高出力を実現した点。

同社はその実現に向け,固体レーザー材料をコアに採用した平面導波路構造により,強い光閉じ込めを図るとともに,レーザー光をその平面導波路内で多数回反射させて増幅する独自の小型光増幅・レーザー構造を開発した。このレーザーは自社の風計測ライダーに応用し,実用展開している。なお,波長は1.5μmのアイセーフとなっている。

授賞式はこの2月20日に行なわれた光産業技術シンポジウムの終了後,リーガロイヤルホテル東京において開催された。櫻井健二郎氏記念賞は光産業技術の振興・普及を図ることを目的として1985年に創設された賞で,光産業の新展開に貢献する新技術の研究開発成果を選出してきた。

表彰式では開会の挨拶を光産業技術振興協会・専務理事の小谷泰久氏が行なった後,選考委員長の荒川泰彦氏(東京大学・名誉教授)が選考の経過報告を行なうとともに,今回の授賞理由を述べた。その後,受賞者の表彰が行なわれ,授賞式は終了となった。

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