東京都市大学は,多孔質層を持つガラス(HNLガラス)に,導電性プラスチックPEDOTを結合させた有機透明導電材料を開発した(ニュースリリース)。
タッチパネルやテレビ画面などに利用できる代表的な導電性プラスチックPEDOTは,透明なガラス表面などに塗布して電極として利用する研究が進められている。これまでガラスと剥がれやすいPEDOTとの接合強度を高めるため,別の有機材料であるPSSが助剤として混ぜられてきた。
ところがPSSは絶縁性のため,電極の導電性を下げる原因となっていた。そこで,独自開発しているHNLガラスを用いることで,PSSを使わずにPEDOTとガラスを強固に結合させた有機透明導電材料を開発した。
現在,スマートフォンや液晶テレビ,有機ELテレビなどのガラス基板には,画像を制御する電極として無機材料の酸化インジウムすず(ITO)が広く使われている。しかし,構成元素のインジウムは希少金属(レアメタル)で,将来的な調達や価格面に改善の余地がある。さらにITOの成膜には真空装置が必要なため,製造コストを高めている。
一方,有機材料は一般に安価な原料から容易に化学合成できる上,無機材料に比べて屈曲性が高いため,タッチパネルなどに用いた時に衝撃に強く,製品形状の自由度も高くなる。また,PEDOTの成膜は常温で,真空装置も不要となる。しかし,これまでのPEDOTの導電性は,同程度の光透過率を持つITOに比べて一般的に1~2桁低いものだった。
今回,HNLガラスを用いてPSSを不要にすることで,導電性を従来のものに比べて約4倍に向上させた(同じ光透過率で比較した場合)。今後,成膜技術の改良で導電性をITO並みに高めていくとしている。