産業技術総合研究所(産総研)は,11月13日~16日にフランスで開催された第26回国際度量衡総会において,キログラムを含む基本4単位の定義改定が審議され,新定義が採択されたと発表した(ニュースリリース)。
この国際度量衡総会で,約130年ぶりに,質量の単位キログラムの定義を「国際キログラム原器」という器物から,物理定数である「プランク定数」を基にした定義に改定することが決定された。
キログラムは国際単位系(SI)の中でも特に重要な基本単位の1つであり,その定義は世界中のあらゆる重さの測定に影響するが,キログラム原器のわずかな不安定さが問題となっていた。そのため,定義改定に向けて主要各国が最高水準の技術を投入し,長期間にわたり,検討と議論が進められてきた。
2017年,産総研を含む各国の国家計量標準機関が測定したプランク定数の値から調整値が決定された。このとき使用されたデータは8つだが,産総研はレーザー干渉計などを用いて4つの測定に関わっている。プランク定数は不変であるため,より信頼性の高い質量の測定が可能になる。
新しい定義は2019年5月20日の世界計量記念日から適用される。この日同時に,ケルビン(温度),アンペア(電流),モル(物質量)の定義改定も実行される。これらの定義改定により,人々の生活にただちに影響がでることはないが,長期的には様々な恩恵がもたらされると期待できるという。
これにより,かつて長さの基準をメートル原器から光の速さにしたことで微細加工の評価が可能になったことと同様に,微小質量を扱うナノテクノロジー,バイオテクノロジーや次世代半導体開発,極低温・超高温制御が必要な材料開発などで求められる高精度な測定を実現し,新しい産業の創出に貢献していくことが期待されるとする。
今回の定義改定により,計量標準は新たな世界へと進化していく。産総研は,今後も日本の計量標準の中心として,高度な測定技術の開発・維持に努め,科学・技術の発展に貢献していくとしている。