浜松ホトニクスは,量子カスケードレーザ(QCL)とMEMS回折格子を搭載した,中赤外レーザ光を8~10μmの範囲で高速に波長を変化させ出力する小型QCLモジュール「波長掃引パルス量子カスケードレーザL14890-09」を新たに開発した(ニュースリリース)。12月3日より発売,価格は300万円(税抜)。
この製品は,QCLのMEMS回折格子側の端面に光学反射を防止する多層コーティングを施し,その端面から波長帯域の広い中赤外レーザー光を出力することで,MEMS回折格子の傾きに応じた特定の波長の光を反射,共振させる。その際,MEMS回折格子を電気的に制御し高速に傾きを変化させることで反射,共振する光の波長を周期的に変え,QCLモジュールから出力する中赤外レーザー光の波長掃引を実現した。
一つの光源から複数の波長の中赤外レーザー光を出力することで,それぞれの波長に吸収を持つ試料の成分を特定するとともにその量を測定し分析することができる。
また,モーターなどにより機械的にミラーを動かし波長を変えるQCLモジュールが市販されているが,この製品は電気的に動作を制御するMEMS回折格子を用いるため高速に波長を変化させることができ,かつ従来製品と比較して飛躍的な小型化を実現した。
これまで,中赤外光を用いた分析は,一般的に大型,高価で高性能な据え置きタイプの分析装置であるFT-IRが用いられていたが,この製品を持ち運び可能なサイズの分析器に組み込むことにより,作業現場で瞬時にFT-IRと同等の分析ができるようになる。
同社では,選果場で果物や野菜のグルコースを分析し糖度を測定する用途や,プラスチックやフィルム,ゴムに含まれる成分を分析,検査する用途などへの応用が期待できるほか,血糖値測定で採血による血糖値測定と同等の結果を得られたことから,非侵襲な小型血中グルコース測定器の実現にも期待できるとしている。