阪大ら,集積型遺伝子回路ナノチップを開発

大阪大学,東京大学,京都大学,早稲田大学らは共同で,遺伝子回路の集積化に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

遺伝子回路は,合理的な設計を通して,遺伝子発現制御をプログラムすることができる。しかし,従来の遺伝子回路では,個々の因子が溶液を漂いながら自由に相互作用するので,非特異的相互作用を完全に排除することができず,意図しない反応が起きてしまうという本質的な問題があった。

研究グループは,ナノメートル精度で分子の空間配置を制御できるDNAナノ構造技術を用いて,遺伝子発現反応に関わる因子を集積化し,因子間の距離とそれに伴う衝突頻度を制御することで,転写反応(設計図であるDNAからRNAを合成)の合理設計を実現した。

また,距離による反応制御の手法を応用することで,光照射による遺伝子回路の書き換えや,様々な物質材料由来のセンサーを用いた多種生物シグナルの検出・演算が可能となり,従来の生物材料のみを用いた遺伝子発現技術と比べて設計自由度が向上したという。

集積型ナノチップ上には,反応に必要な因子が全て揃っており,検出・演算・出力が1チップで完結している(自律ナノチップ)。細胞の状況を検査・診断し,その場での応答物質生産が1チップ上で可能かどうかを試験管内で検証したところ,人工細胞を対象としたモデル実験に成功した。今後,細胞や人工細胞の運命制御を通した医療への展開・貢献が期待されるとしている。

その他関連ニュース

  • 広島大,遮光による茶葉表皮細胞への影響を解析 2024年03月25日
  • 名大ら,引張り力で体中の蛍光色が変わるマウス作出 2024年01月15日
  • 九州大ら,ダイズ油の明所臭に関わる遺伝子を特定 2023年12月08日
  • 名大ら,蛍光マーカーでデンキウナギのDNA導入確認 2023年12月07日
  • 理研ら,光回復酵素による損傷DNA修復反応を解明
    理研ら,光回復酵素による損傷DNA修復反応を解明 2023年12月01日
  • 東大,SPRによる抗原―抗体間相互作用解析系を開発 2023年11月24日
  • 京大ら,光エネルギーで新しい化学修飾核酸を合成 2023年11月01日
  • 東邦大ら,紫外線損傷DNAの修復DNAの構造解明 2023年10月05日