京都大学の研究グループは,⾚外域に局在表面プラズモン共鳴(LSPR)を⽰すヘテロ構造ナノ粒⼦を合成し,新しい機構に基づくプラズモン誘起電荷移動を発見することに成功した(ニュースリリース)。
LSPRは,紫外から赤外域まで幅広い波長で制御することが可能という特性から,高効率の太陽光‐エネルギー変換の実現のための鍵を握る現象として注目を集めている。LSPR材料と半導体の界面で進行するプラズモン誘起電荷分離は,LSPRバンドの励起によりLSPR材料中に生じた熱キャリアの半導体への注入を通じて起こるが,電荷分離後の再結合による損失が大きいため,その抑制が重要な課題となっていた。
今回の研究では,赤外域にLSPRバンドを示す硫化銅ナノ粒子と硫化カドミウムナノ粒子を連結させた構造を有するナノ粒子(ヘテロ構造ナノ粒子)合成した。このヘテロ構造ナノ粒子におけるプラズモン誘起電荷分離を過渡吸収スペクトル測定によって観測することで,新しい機構に基づく電荷移動が進行することを発見した。
また,ヘテロ構造ナノ粒子における電荷分離寿命はおよそ9マイクロ秒と見積もることができ,一般的なプラズモン誘起電荷分離において観測される電荷分離寿命を大きく凌駕しており,LSPR材料を用いたエネルギー変換の実用化に大きく貢献することが期待されるという。また,この機構の発見は赤外域の光を用いた光エネルギー変換材料,たとえば赤外光触媒や赤外光電変換材料といった新しい材料の開発につながることが期待されるとしている。
今回の研究の結果,今までに報告されてない新しいプラズモン誘起電荷分離機構を発見することに成功した。今後は,今回発見された機構を応用することで,赤外域の光を用いた光エネルギー変換材料,たとえば赤外光触媒や赤外光電変換材料といった革新的な材料の開発を進めていくとしている。