
人とくるまのテクノロジー展(パシフィコ横浜)において自動車技術会賞が発表され,授賞式が行なわれた。このうち論文賞で2件,技術開発賞で1件,計3件のレーザー関連技術が受賞した。
論文賞を受賞したのは東京都市大学の山坂淨成氏およびサイバーレーザーの田原大和氏らのグループによる「超短パルスレーザーによるピストンリングのテクスチャリング加工が摩擦力に及ぼす影響」。
エンジンのピストンには,ガスシールやオイルシールといった機能を持つピストンリングが嵌められている。このピストンリングの摩擦損失を低減させることで,エンジンの燃費改善が期待できるという。研究グループは,ガスシールの性能を確保しつつ摩擦損失を低減させる手法として,一番上のリングのガスシールの下の部分に超短パルスレーザー加工によりテクスチャリングを施す手法を提案した。
レーザー加工はサイバーレーザーが担当。クロムナイトライド製のピストリングに直径15μm,深さ5μmのディンプルを多数彫ったテクスチャを形成した。使用したのは波長1030nm,出力20W,パルス幅3ピコ秒の超短パルスレーザー。熱変形や熱変質が発生しない非熱加工がこの加工を可能にした。
この加工により,テクスチャが摩擦力を低減し,摩擦損失を10~20%低減することが確認された。燃費改善のためエンジンは高過給化の傾向にあるが,そのような厳しい条件下でピストンリングに要求される機能を保持しつつ摩擦損失を低減させる手法が具体的に示されたとしている。

もう一点,論文賞を受賞したのは,徳島大学の出口祥啓氏と,トヨタ自動車,スズキ自動車らのグループが発表した「CT半導体レーザ吸収法を用いたエンジン筒内の2次元時系列温度分布計測」。
エンジンの燃焼特性を測定する方法として,レーザー誘起蛍光法などによるエンジンのピストン内部の計測があるが,エンジンの改造して計測窓を設置する必要があるなど煩雑だった。
今回開発したのは,半導体レーザー吸収法にCT(Computed Tomography)を組合せたCT半導体レーザー吸収法。この方法は,エンジンヘッドとエンジンブロックの間にCT計測セルを挟み込むことにより,筒内の2次元温度・濃度分布が計測できるというもの。
具体的には,ピストン筒内上部の円周上に,レーザーを照射する窓と対抗側に受光窓を複数設けたガスケット状の薄型計測プローブを挟み,温度やCO2など計測の目的に適した波長のレーザーを入れ,動作するエンジン筒内での吸収を計測して画像を再構成する。この方法により,エンジン筒内における2次元時系列温度計測を世界で初めて達成した。
広波長域を高速にスキャンできるこの手法は,エンジン構造を改造することなく,筒内の温度・濃度分布を計測できる技術だとして高く評価された。

技術開発賞は,トヨタ自動車の青山宏典氏らが開発した「高速燃焼とグローバル生産を可能にした新レーザクラッドバルブシート技術」が受賞した。
エンジン内部に燃料と空気の混合気を吸入する吸気ポートは,吸気バルブが高速で当たるため,エンジンとは別素材である鉄系の材料でできたバルブシートと呼ばれる部品を圧入して形成されている。しかし,バルブシートをエンジンに密着させるためにはある程度の厚さが必要であることが,吸気ポートの設計形状を制限しており,エンジンの燃焼効率を向上する妨げとなっていた。
今回研究グループは,レーザーを用いてエンジンにバルブシート材料粉末を直接肉盛りする技術を開発した。従来にも試された技術だったが,今回は半導体レーザーを用い,エンジンではなくレーザーヘッドを動かして円形に肉盛りすることでコンパクトな生産設備を実現した。粉末材料にはエンジンの材料であるアルミと親和性の高い銅とセラミックスを混合したものを開発した。
この技術により,世界最高の吸気効率を有する理想的な直線ポート形状を具現化し,高い熱効率(ガソリン車40%,HV車41%)を達成した。また,ガソリンだけでなく,再生可能エネルギーであるバイオエタノールに対しても高い信頼性を有する新合金と,高効率でロバスト性に優れた新工法を開発したことで,持続可能な社会の実現にも貢献することが高く評価された。
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