KEKら,放射光計測と応用数学で材料破壊の起点を抽出

高エネルギー加速器研究機構(KEK),東北大学,新日鐵住金は共同で,金属酸化物の化学状態が不均一に変化する現象を放射光X線顕微法で観察し,応用数学の手法のひとつ,パーシステントホモロジーを活用してその反応起点を特定するという,世界初の研究手法を開発した(ニュースリリース)。

材料の不均一性は,作りたての材料の特性を決めるだけでなく,実環境で使用する際の寿命や信頼性を左右することが多い。例えば,破壊・劣化・腐食といった現象は,最も弱いミクロ部位が材料全体の特性を決める。

材料の把握のためには,全体の平均値の測定だけでなく,ミクロでの不均一性の測定が不可欠で,その情報は材料イノベーションを実現する上でとても重要になる。近年,様々な計測手法が用いられ,得られる情報は日々多様化し高度化している。その計測手法の代表として顕微法がある。

従来の材料研究では,先人が構築してきた研究理論や自らの経験と知識を総動員して,顕微法で観察された不均一性の原因を細かく調べてきた。そのため思いつくメカニズムが従来の知見の想定範囲内にとどまる傾向があった。さらに,実験データの種類・量は膨大となり,単純に人間が判断できる限界を越えているという問題もある。

そこで研究グループは,膨大なデータを最大限活用して,全く新たな視点で材料欠陥のメカニズムを解明すべく研究に取り組んだ。それには機械学習やAIを用いた中立的かつ高速なデータ解析が必要となる。そのため,マクロ特性との関連づけを行なう適切な材料を記述する指標を与えることが必要だった。

研究グループは顕微法により観察された不均一性の“かたち”に着目。ミクロな見た目の“かたち”を正しく読み取り,内包する情報を引き出す方法として,応用数学のひとつであるパーシステントホモロジーを採用した。その結果,不均一性の“かたち”の特徴を数値化し,内在する情報(材料全体の破壊が起こる起点)を抽出することに成功した。

この技術は今回の実例に限らず様々な反応や分野に展開可能で,今後,機械学習や人工知能(AI)を用いた材料開発に不可欠なアプローチ法のひとつになると期待されるとしている。

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