名古屋大学,豊田工業大学,東北大学,豊田理化学研究所らは共同研究により,超伝導になる準結晶を世界に先駆けて発見した(ニュースリリース)。
固体は3種類(結晶,アモルファス,準結晶)に分類される。準結晶の原子配列は,一見アモルファスと同じように乱雑だが,実際にはある規則に従っているという特徴がある。
熱力学的に準安定な準結晶だけでなく安定な準結晶も数多く発見・合成され,その幾何学的構造については理解が大きく進んだ。しかし,その中を動き回っている電子がどのように振る舞っているかは分かっておらず,準結晶だけが超伝導を示すものが見つかっていなかった。
研究では,アルミニウム(Al),亜鉛(Zn),マグネシウム(Mg)から準結晶を合成した。合成された試料を冷却し,種々の物理量を計測したところ,マイスナー効果と呼ばれる,超伝導状態を特徴づける現象が観察された。また比熱が急激に大きくなり,超伝導がバルクの性質であることを示し,準結晶も「長距離秩序を持った電子状態」を取りうることが判明した。
さらに,準結晶と同じ局所構造を持ちながら周期性を持つ「近似結晶」と呼ばれる試料を合成し,同様の物性計測を行なった。その結果,近似結晶の全てが超伝導を示し,その転移温度が組成比に依存して大きく変わることを見出した。これらを準結晶の結果と比較することにより,準結晶と近似結晶とで,超伝導引力の大きさが同じであることを明らかにした。
超伝導転移温度を決めるのは,「引力の大きさ」と「電子対(クーパー対)の形成に関わる電子数」(正確には,「フェルミ準位における状態密度」)。「引力の大きさ」は測定された試料すべてについて同じであるので,超伝導転移温度の大小を決めているのは「フェルミ準位における状態密度」となる。
準結晶では「フェルミ準位における状態密度」が小さくなると期待されることから,準結晶試料の超伝導転移温度が低い原因は「『フェルミ準位における状態密度』が低い」という準結晶の特性のためであると結論されるという。
これまでの理論研究によれば,準結晶の超伝導は従来の超伝導とは異なるタイプのペアーを形成している可能性があり,この発見は,今後,新型の超伝導の解明に繋がるものだとしている。