日本電気(NEC),産業技術総合研究所(産総研),名城ナノカーボンは,NEDOプロジェクトの成果をもとに,非イオン性分散剤を使い99%以上の高純度で半導体型の単層カーボンナノチューブ(単層CNT)を分離できる製造技術の確立に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。2018年度から名城ナノカーボンがサンプル販売を開始する。
単層CNTは,直径約1nm,長さ数µmの炭素による円筒構造体で,炭素の並び方の違い(巻き方)により半導体型と金属型といった異なる物性を示すことが知られている。特に半導体型CNTは,印刷技術を利用して電子回路などのエレクトロニクス製品を生産する印刷エレクトロニクスの材料(高機能性インク)として注目されている。
印刷エレクトロニクスは,高い電子移動度と化学的安定性を持つ半導体型CNTをトランジスタのチャネル材料として利用することで,大面積,超薄型・フレキシブル,安価かつ高速動作可能で高性能なIoT利活用に不可欠なセンサーデバイスを製造することができる。
しかし,単層CNTは半導体型と金属型が混在して生成されるので,高性能なトランジスタのための高機能性インク材料として用いるには,半導体型CNTだけを高純度かつ効率的に分離する技術が不可欠となる。従来,密度勾配超遠心分離法やゲルカラムクロマトグラフィー法などのさまざまな分離技術が提案されてきたが,いずれもイオン性界面活性剤などを使用するため,エレクトロニクス用途の場合,デバイスの動作を不安定にしてしまうなどの課題があった。
そこで,NECと産総研は,イオン性界面活性剤を用いない単層CNT分離技術「電界誘起層形成法(ELF法)」を開発し,NEDOプロジェクトにおいて99%以上の高純度で半導体型CNTを分離することに成功した。そして今回,NEC,産総研名城ナノカーボンの3者は,世界で初めてELF法による半導体型CNTの製造技術を確立した。
これにより,デバイス動作に悪影響を与える分散剤を使わずに,高機能性インク材料の製造が可能となり,印刷エレクトロニクスによる高性能なトランジスタの実現が期待できるとしている。